(画像)Medvid.com / shutterstock
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北朝鮮の国民も過剰演出に呆れ…「正恩元帥様の前ではコロナも逃げ出す!」

北朝鮮は9月28、29日に開催した最高人民会議(日本の国会に相当)で、金正恩総書記の実妹である金与正党副部長を国務委員会の委員に任命した。


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「北朝鮮の核心である国務委員は今回の人事で1人減りましたが、外交・対南担当は4人体制が維持されており、米韓外交に注力していく姿勢がうかがえます。従来のメンバー4人は、党統一戦線部の金英哲部長と外交トップの金衡俊前党国際部長、李善権外相、崔善姫第一外務次官でしたが、このうち金衡俊氏と崔善姫氏が抜け、入れ替わりで与正氏と金成男党国際部長が加わりました」(国際ジャーナリスト)


与正氏は青瓦台(韓国大統領府)にファンクラブがあるほど、韓国社会での認知度が高い。今回の抜擢は、北朝鮮が本気で対南関係を動かそうとしていると、韓国の文在寅政権に期待を抱かせる意味もある。


国務委員に就任する直前に、与正氏は立て続けに談話を発表した。


24日の談話では、国連総会(22日)における文氏の朝鮮戦争「終戦宣言」提案に対し、ののしるどころか「終戦宣言といった問題を意義のある形で解決する機会を与えてやる」と、珍しく褒めている。


一方の文氏は「終戦」に言及したものの、自国が北朝鮮からのミサイル攻撃の標的になっているにもかかわらず、ミサイル発射には一言も触れなかった。ほぼ操られているとみられる。


25日の談話で与正氏は、南北首脳会談のほか、北朝鮮が一方的に切断した南北連絡線についても言及。すると4日後の29日には、正恩氏が10月初旬に南北連絡線を復旧させると発表し、10月4日に南北の当局者同士が、2カ月ぶりに電話でやりとりを交わした。国務委員となった与正氏の発言は、正恩氏のものと同一視していいだろう。

来年3月の韓国大統領選を意識

今後も北朝鮮は、南北融和への成果を上げて、政治的レガシー(遺産)にしたいという文氏につけ込み続けるはずだ。

「終戦宣言を持ち出した韓国側が、今後も柔軟な姿勢を見せるのなら、2018年9月の南北首脳会談で約束した正恩氏の訪韓というカードを切ってくるはず。訪韓が実現すれば、たとえ首脳会談で成果が出なくても、韓国内の融和ムードを高めることができる。来年3月の大統領選で、親北路線を引き継ぐ与党候補に、有利な環境をつくれると計算しているのです」(同)


北朝鮮は9月に入ってから長距離巡航ミサイル(11、12日)、鉄道発射式の短距離弾道ミサイル(15日)、極超音速ミサイル『火星8』(28日)、新たに開発した対空ミサイル(30日)を立て続けに発射した。


「今年1月の第8回党大会で、正恩氏はミサイル開発の大号令をかけており、それが着実に実行されている。軍事力を強化させた後、どこかのタイミングで米国との交渉に持ち込みたい思惑だろうが、現段階でバイデン米大統領はさほど北朝鮮問題に関心がない」(同)


韓国メディアは、こうした北朝鮮のミサイル能力向上に警鐘を鳴らしているが、文政権は与正氏の「南側が敵対的でなければ関係回復の用意がある」という発言に惑わされ、むしろ対北朝鮮制裁を緩和する時期がきていると主張するほど、意のままになっている。


「ただし、北朝鮮が迎撃不可能と豪語していた『火星8』は、韓国軍が捕捉したデータから判断すると、失敗に終わった可能性が高い。おそらく正恩氏の大号令に焦って、やみくもに実験を遂行しているのでしょう」(軍事ライター)

崩壊したソ連や東欧を予兆させ…

かつてのソ連や東欧は、他国を圧迫するために「軍事費」が膨らんだことや、過剰な「法的強制力」に対して国民の不満が爆発したことが崩壊につながった。現在の北朝鮮には確実にその予兆があり、特に核・ミサイル開発への莫大な資金投入と、昨年12月に制定した「反動的思想・文化排撃法」は、国家崩壊に導く危険性をはらんでいる。

「北朝鮮国内で、正恩氏に対する失望はかなり高まっている。かつては体制を理念的に守護するため、朝鮮労働党党員たちに『チュチェ思想』を学ばせていたのですが、最近はそれが機能しないことから、刑罰を重くしているのです」(北朝鮮ウオッチャー)


また、「反動的思想・文化排撃法」は単なる韓流取り締まりにとどまらず、国民の生活を身動きが取れないほど、がんじがらめにするものだった。


「何しろ同法第27条では、韓流作品を視聴しただけで5年以上15年以下の労働教化刑(懲役)を宣告され、コンテンツを流入させて流布した者は、無期労働教化刑(無期懲役)や死刑などの最高刑に処せられる。だが、この厳しさの裏を返せば、崩壊する壁を必死に押しとどめようとしているにすぎないのです」(同)


北朝鮮は、国際社会が供給しようとした約300万回分の新型コロナワクチンを、事実上拒否している。


「北朝鮮では、外部から危機が迫ったとき、正恩氏が救世主となって国民を救うことになっています。もしワクチンの供給を受け入れれば、新型コロナを正恩氏が克服したのではなく、他国に救われたことになってしまう。正恩氏が出席する行事では、ノーマスクの参加者たちが目立ちますが、それは正恩氏の前ではコロナも逃げ出すという演出です。さすがに国民もあきれていますよ」(同)


現在の北朝鮮は、ソ連や東欧が崩壊したときよりもひどい状況にある。