蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~サウナブームと「週刊実話」世代

数年前から、にわかに脚光を浴びていたサウナが、ここにきて本格的なブームになっているという。サウナ施設は、どこも大混雑のようだ。


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俺は汗をかくのが嫌いだから、サウナはそんなに好きじゃない。それでも、たまに郊外の日帰り温泉施設なんかに行った時に入ることはあるんだけど、そこまで混んでる印象はないね。だから今回のサウナブームは、都会の文化系の若者たちの間で流行ってるものなのかもしれない。


俺にとってサウナのイメージは「オヤジの溜まり場」。とはいえ、サウナは基礎疾患がある人は気を付けなくちゃいけないから、そこそこ健康な人の趣味なんだと思う。ただ、その世代のオヤジは無駄に対抗意識があるから、若い奴が入ってきたら熱くても先に出ないとか意地を張ったりするんだよね。若者が10分入ってても、自分が3分しか持たないなら出ればいい。こんな簡単なことが昭和世代のオヤジたちは出来ないんだよ。これはやっぱり若い頃から「根性論」で育てられてきたからだと思う。


仕事もスポーツも、酒もサウナも、とにかく我慢してやればモノになるという価値観で理論も何もない。


俺がプロレスに入門した頃は、まだ根性論のシゴキが残ってた。でも、俺たちは自分たちで理論を学んで、効率的なトレーニングをやるようになって、徐々に根性論を排除していった。


だから、俺たちより若い世代は最初から合理的でイジメもシゴキもない、それぞれのペースで練習できる環境になったと思う。


そう考えると、俺たちは上から理不尽な目に遭ってきて、そのバトンを下に繋がなかったという、防波堤みたいな世代。一番損したというか、我慢してきたような気がするよ。

60~70代の昭和世代のヤバさ

酒だって、俺が若い頃は先輩が無理強いしてきて、とにかく吐いてでも飲めというムードだった。俺は新弟子の時からハッキリ断るタイプだったんだけど、ちゃんと意思を示せば、さすがの先輩たちもそれ以上は勧めてこなかった。

でも、闘魂三銃士の頃、台湾に遠征に行って現地の有力者のパーティーに呼ばれたことがあってね。その主催者が俺にすごく酒を飲ませようとしてくるんだよ。客人にいい酒を飲ませたいという文化だということも分かるけど、あまりにもしつこくてね。最後はキレて「そんなに飲みたいなら、お前が飲め!」と、そいつにぜんぶ飲ませてやったよ。


俺はどんな酒席でも、それぞれがマイペースで飲めばいいと思うんだけど、俺らより上の世代は、まだ無理強いしようとする人がいるからね。今の若者がそういうオヤジに遭遇したら、異星人でも見るような気持ちになると思う。


だから最近思うんだけど、20~30代の若い世代は俺たちより上の60~70代の昭和世代のヤバさを知らない。この世代のオヤジ連中は、育ってきた環境も常識も違う。それを時代に合わせようという気持ちもない。今の基準で言えば、ある意味で全員が犯罪者予備軍みたいなもんだよ。ちょうどこの『週刊実話』を読んでるくらいの世代のことだけど。


若い世代は、この『週刊実話』を読んで、こんなヤバいものしか載ってない雑誌を好んでいる世代が同じ社会にいるんだということを研究しておくべきだね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。