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日大背任事件――田中理事長側近を逮捕した東京地検特捜部の頂上作戦

日本大学お茶の水校舎
日本大学お茶の水校舎 (C)週刊実話Web

日本大学(本部・東京都千代田区)のドンとして10年以上君臨する田中英寿理事長(74)の側近中の側近がついに逮捕された――。

東京地検特捜部は10月7日、日大医学部附属板橋病院の建て替え工事費の不正流出で、日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)と大阪市内の医療法人グループ『錦秀会』前理事長の藪本雅巳容疑者(61)を背任容疑で逮捕した。逮捕容疑は、日大板橋病院建て替え設計業務をめぐり、昨年5月頃、受注した設計会社へ着手金約7億3000万円のうち、2億2000万円を外部に流出させ、日大に損害を与えたとしている。

外部流出先は、藪本容疑者が全株式を保有するコンサルティング会社で、2億2000万円のうち約6600万円が井ノ口容疑者側に渡ったと見られている。

特捜部は9月8日に日大本部や田中理事長の自宅を家宅捜索しており、田中理事長本人への事情聴取も任意で行っている。田中理事長は資金流出への関与について否定している。

そもそも、背任事件で中心的な舞台となったのは、日本大学が100%出資する『株式会社日本大学事業部』(東京都世田谷区)だ。業務内容は学内の物品調達、グッズ販売、広告業、施設の運営・管理など幅広く展開。井ノ口容疑者は日大事業部の取締役を兼務しており、日大板橋病院建て替え事業も主導していた。

「井ノ口氏は田中理事長の威光を笠に、日大事業部の利権を貪ってきた。その一部が田中理事長に流れているのではないか、として特捜部は事情聴取したわけです。田中理事長は〝金はもらっていない〟などと全面否定しているが、特捜部は資金流出の全容解明に向け捜査を進める方針です。1000億円とされる日大板橋病院建て替え事業利権の闇は相当根深い。現職理事が捕まったことへの責任問題だけでも、トップの田中理事長の辞任は避けられませんよ」(事件ライター)

“日大の女帝”に影響が及ぶのは必至

日大のドン・田中理事長が失脚となれば、その影響が各方面に及ぶのは必至。とりわけ、田中理事長が唯一、頭の上がらないとされる〝日大の女帝〟は、その最たる例だろう。田中理事長の妻、Y夫人である。

「内心、ほくそ笑んでいるのは大相撲力士の遠藤ですよ。遠藤が日大相撲部に在籍していた頃から、Y夫人は男前の彼にべた惚れ。追手風部屋に入門してからは後援会を作ってあげるほど手塩にかけたんです。しかし一昨年、遠藤の極秘婚が発覚した途端、後援会の解散騒動に発展した。田中理事長とY夫人の影響力が弱まれば、相撲界でも〝田中夫婦離れ〟が起きますから遠藤もひと安心でしょう」(大相撲担当記者)

田中理事長はかつて「アマ相撲界の大鵬」と持て囃され、アマチュア横綱に3回輝いている。延べ34個のタイトルを獲得し、1980年に現役引退。指導者としては83年に日大相撲部監督に就任している。

「これまで横綱・輪島、大関・琴光喜、小結・舞の海、小結・高見盛ら50人以上の教え子を大相撲界に送り出している。中でも、一番目にかけていたのが遠藤だった。というより、田中理事長を尻に敷いているY夫人のお気入りだったからなんですけどね」(角界関係者)

遠藤が入門してわずか1年で三役目前の東前頭筆頭に昇進した2014年、四股名から取った『藤の会』という後援会を立ち上げたことからも田中理事長夫妻の寵愛ぶりが垣間見える。今回、井ノ口容疑者と一緒に共犯で逮捕された藪本容疑者は遠藤の後援会『藤の会』会長だった。

「後援会は東京だけではなく、大阪、名古屋、福岡と大相撲が開催される地域に支部が置かれたんです。『藤の会』は日大校友会が主流。校友会会長は田中理事長で会員は100万人以上。年会費は1万円ですから莫大な金が入る仕組みになっている。大相撲の本場所ごとに後援会主宰で激励会も開かれていた。一度に500人~1000人を集客する盛大なパーティーです。そのパーティーを裏で牛耳っていたのがY夫人です」(日大OB)

密談会場は夫人ちゃんこ店

Y夫人はちゃんこ料理店(東京・杉並区)を経営。同店は日大事業部の「奥の院」と称されていた。理事や役員らが集まっては事業を決定する場所として利用されていたからだ。言うなれば、大物政治家が使う料亭のようなもの。ちなみに、大手グルメサイト『食べログ』の評価は3.05になっており、可もなく不可もないといったところだろう。

「この中には、井ノ口容疑者の実姉で広告代理店を経営するH女史がいるんです。彼女は日大の広告部門の仕事に食い込んだだけでなく、遠藤の後援会パーティーも仕切っていた」(前出・角界関係者)

名古屋の某ホテルで後援会パーティーが開かれた際、H女史は会費1万5000円を徴収。祝儀としても1本10万円以上を集め、請負料として数百万円抜いていたという噂話もあるほど。

「Y夫人は、H女史と組んで後援会をうまく利用していたんです。ところが、遠藤は19年5月に田中理事長夫妻には内緒で一般女性と結婚した。しかし、同年10月にスポーツ紙に極秘結婚がスッパ抜かれた。激怒した田中理事長側の意向なのでしょう、後援会の『藤の会』は解散状態となった」(ベテラン夕刊紙記者)

「結婚を報告しなかった不義理を含めて、遠藤が田中理事長夫妻の言うことを聞かなくなった。それが原因ですよ」(前出・日大OB)

特捜部の〝頂上作戦〟はどこまでメスが入るのか。

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