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牛乳や豆乳を猛追する「第3のミルク」成長の背景~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

牛乳と豆乳に次ぐ、アーモンドミルクやココナッツミルク、オーツ麦を原料としたオーツミルクなど、いわゆる「第3のミルク」市場が活況を呈している。

2020年度の販売額は、アーモンドミルクだけを見ても前年比19%増で、100億円強と勢いづいている(アーモンドミルク研究会調査)。

食品メーカー関係者が解説する。

「第3のミルク急伸の背景には、コロナ禍の巣ごもり生活で活動量が減り、同じ飲料でも糖質やカロリーが低いものを選ぶなど、健康意識の高まりがある。また、美容への意識が高い女性からも支持されています」

管理栄養士が指摘する。

「例えば、アーモンドミルクはビタミンEが豊富で、オレイン酸などの不飽和脂肪酸が多く含まれる。ビタミンEは抗酸化作用があり、生活習慣病や老化の防止に効果大。不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減少させ、高血圧や動脈硬化を予防できます」

また、第3のミルクは風味に癖がなく、飲みやすさも市場の定着につながったという。

「植物性由来のミルクは、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする乳糖不耐症の人にも重宝されています」(同)

もともと第3のミルクは、ベジタリアン(菜食主義者)やヴィーガン(完全菜食主義者)が多い欧米を中心に浸透。植物性由来のミルクは、生産時の二酸化炭素排出量が牛乳と比較して低いなど、世界的な人口増による食糧危機や環境問題への意識が高まる日本でも、需要が年々増えている。

相次ぐ大手飲料&食品メーカーの参入

国内で徐々に第3のミルクへのニーズが高まる中、大手飲料メーカーや食品メーカーの参入が相次ぎ、2022年にはアーモンド飲料を含む植物性飲料の販売額が、13年比で約20倍の124億円になると予想される。

豆乳トップの『キッコーマン飲料』(東京都港区)は、昨年9月、オーストラリア産マカダミアナッツを100%使用した『マカダミアミルク』を発売。コレステロールはゼロで、コーヒーや紅茶に加えても、まろやかな味わいが楽しめるという。

「今年3月には『日本コカ・コーラ』(東京都渋谷区)が、同社初の植物性ミルク飲料『GO:GOOD おいしいオーツ麦ミルク』を発売した。欧米では第3のミルクが、かなりの勢いで市場を形成している一方、日本の市場はまだこれから。コカ・コーラの参入で、第3のミルクに興味を抱く消費者が増えたと言われています」(経済誌記者)

コーヒーで知られる『ネスレ日本』(神戸市)も、植物性ミルクの伸びを受け、今年からアーモンドミルクとオーツミルクの両方のアプローチで、第3のミルク市場に参戦している。

また、豆乳大手の『マルサンアイ』(愛知県岡崎市)も、今年3月から北欧産オーツ麦原料の『オーツミルク』を発売している。フードライターが言う。

「アーモンドミルク市場は、約9割のシェアを持つ『江崎グリコ』(大阪市)が引っ張っている。同社が販売する『アーモンド効果』の売り上げは、14年の発売からほぼ毎年、前年を上回っています」

さらに、カフェチェーンの『スターバックス・コーヒー』(東京都品川区)が、アーモンドミルクやオーツミルクを提供し、第3のミルク人気に一役買っている。

価格の高さに二の足を踏む消費者も…

しかし、第3のミルクにも課題がある。

まずは牛乳や豆乳の価格に比べると、比較的高いことだ。そのため、健康や美容、環境のためと納得している消費者以外は、まだ二の足を踏む商品でもある。

実際、値下げで業績を伸ばした第3のミルクがあることでも分かるように、価格の問題は大きい。

「例えば『ポッカサッポロフード&ビバレッジ』(名古屋市)の『アーモンド・ブリーズ』は、20年12月期の売り上げが前年比約1.6倍で、今年1~3月も約1.3倍と好調。その要因は20年の春先に、1リットル商品を税抜き350円と一気に48円も値下げしたことで、女性を中心に新購買層が大幅に増えたと言われています」(同)

また、日本市場の中で、欧米のように第3のミルクが完全に定着していないことも、今後の懸念材料だという。経営コンサルタントが指摘する。

「英国の市場調査会社『ミンテル』によれば、米国における第3のミルク市場は、アーモンドミルクだけを見ても23年に1500億円規模に達するという。その背景にはマクドナルドなどの大企業が、第3のミルクを積極的に導入する傾向があり、また何よりも健康や環境に対する意識が、日本よりはるかに高いことも大きな要因です」

米国と比較して日本の市場は、第3のミルク全体で見ても120億円前後で、確かに伸びてはいるが大規模な市場形成には程遠い。実際に数年前には、ライスミルクが一時期注目されていたが、ブレークするには至らなかった。

第3のミルクが安定市場となるには、商品価格全般のさらなるプライスダウンが必要だろう。そして、日本人の健康や環境への意識が、もう一段階高まることも必要かもしれない。

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