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日本全国☆釣り行脚~『シャコ』~福島県いわき市/四倉港産

シャコ釣りはロマンだ! 
シャコ釣りはロマンだ!  (C)週刊実話Web

いきなり私事で恐縮ですが、先日、印象深いことがありまして、まずはそのお話からしたいと思います。

場所は福島県いわき市の江名地区。縁がありまして、地元の漁師さんとお話をする機会がありました。その漁師さんというのが、スキンヘッドに濃い目のサングラス、犬の顔をあしらったトレーナーにサンダルという実にナイスな出で立ち。極めてワタクシ好みの風貌です。

で、話を進めるうちに、手堅く利益の出る獲物を獲ることを勧める我々に対し、その重要性を理解しながらもイマイチ乗り気ではない様子で商談は進みました。そして自らの逡巡を吐露するかのように発した一言に、ワタクシは衝撃を受けるのでありました。

「でもなぁ~、手堅くはない魚には〝ロマン〟があっからねぇ~」

サングラスの奥のつぶらな瞳は遠くを見つめ、やや浅黒く日焼けしたスキンヘッドは鈍い光りを放っていたのでした。その姿はまるでロマンの象徴! そうよ、釣りだってロマンが大事なのよ!

ということで、今回はロマンを追う釣行をしようと、福島県いわき市の四倉港でシャコを狙うことにしました。これのどこにロマンがあるのかは、ご想像におまかせします。

シャコ釣りだってもっとポピュラーになってイイ!

シャコといえば、ハゼやカレイを狙った投げ釣りで時折掛かる定番の外道。まとまって釣れることはほぼなく、多くてもせいぜい2~3尾ですからリリースする人が多いのが実情です。

ただ地域によって事情が異なるようで、北海道の石狩新港や小樽港、あるいは宮城県の仙台湾など、ごく限られたエリアでは季節のターゲットとして定着しており、大手釣具メーカーから専用仕掛けが販売されていたりもします。ならば、もっと様々なエリアでも狙って釣ることができるのではないか? 〝手長エビ釣り〟が長らく根付いているのだから、シャコ釣りだってもっとポピュラーになってイイのではないか? これぞ開拓、これぞロマン! 例え1回で結果が出なくたってイイんです。その姿勢が〝ロマン〟なんです。

と言いつつ、ホントは旨い甲殻類で晩酌を楽しみたいだけだったり…。シャコ、旨いですもんねぇ。

ということで、秋晴れの休日に福島県いわき市へ。早朝にお目当ての四倉港内に下り立ちましたが、折からの強い北風で外海は大荒れです…。港内もシケの影響で海底の砂が巻き上げられて水がかなり濁っております。経験上、シャコを狙うにあたってはこのような状況はよくありません。

福島県いわき市の四倉港でシャコを狙う
福島県いわき市の四倉港でシャコを狙う (C)週刊実話Web

「まあ、ポイント開拓も兼ねてだからのんびりと…」

ロマンなどみじんも感じない言い訳を心の中で発しつつ、数本の安物竿に仕掛けを繋いで放り込みます。あとはしばし放置し、定期的に様子を見るのみ。釣り方といっても至って簡単なものですから、テクニックのないワタクシにはうってつけなのです。

外道のフグや海水の濁りを避けて港奥に腰を据えてしばし、1本の竿に海藻を引っ掛けたような重みが伝わりました。

「これは間違いない…」

慎重に巻き上げてくると水面下にうごめくシャコの影が見えました。虫のようにワラワラと揺らめきながら上がってくる様は何ともクセになります。

虫とエビの間の子みたいな気持ちの悪い外観のシャコ
虫とエビの間の子みたいな気持ちの悪い外観のシャコ (C)週刊実話Web

さあ、ここから! と勢い付くところですが、風がさらに強まって港奥にまで外海の濁りが入るようになってしまいました。その影響かシャコからの反応は薄くなる一方。結局、釣果は3尾に終わりました。せめて2ケタは釣りたいところでしたが、「今回はこれくらいで勘弁しといたるわ」と北風に吹かれながら竿を畳んだのでありました。

茹でたて熱々のシャコは酒足りぬ旨さ!

シャコは昔から食用としてかなりの需要があり、特に三陸、あるいは瀬戸内あたりでは家庭でも食べられております。ただ、近年は漁獲量が減り、市場では「剥き身」「姿茹で」「活け」のいずれもかなり高価になっているのが実情です。

茹でたて熱々のシャコをがぶり
茹でたて熱々のシャコをがぶり (C)週刊実話Web

一般的なシャコ料理といえば、ボイルされた剥き身が寿司ネタとしてポピュラーで、召し上がったことのある方も多いかと思います。その食味を評して「エビをアッサリさせた感じの…」とされることが多いのですが、茹でたて熱々の殻を剥いてガブリとやれば、その味はまた別物。甲殻類の旨味が極めて濃厚で、ワンカップがクイクイ進みます。当然3尾で足りるわけはなく、後半はチビチビとかじってアッという間に完食となりました。

虫とエビの間の子みたいな気持ちの悪い外観、重いだけで特に引きも楽しめない釣り応えなど極めてマニアックな生き物ですが、味は格別。コイツを大量に釣ってシャコ三昧の晩酌を楽しむのもワタクシにとってはロマンなのであります。

ということで、また来週。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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