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『EV(イブ)』著者:高嶋哲夫〜話題の1冊☆著者インタビュー

『EV』著者:高嶋哲夫/角川春樹事務所

高嶋哲夫(たかしま・てつお)
1949年岡山県生まれ。慶應義塾大学工学部卒。同大学院修士課程を経て、日本原子力研究所研究員。79年には日本原子力学会技術賞受賞。カリフォルニア大学に留学し、帰国後、作家に転身。文学のみならず防災・エネルギー・教育関連での提言も評価が高い。

――『首都感染』(講談社)など著書は〝予言の書〟と注目されています。将来的に起こるとされる災害を、なぜ予測できるのですか。

高嶋 予言という感覚はありません。想像力だと思います。過去を調べ、現在を分析すれば、大まかな未来は想像できます。たまに外れますが(笑)。次は、東京直下型地震と南海トラフ巨大地震です。30年以内に起こる確率は前者は70%、後者は80%と政府は試算しています。

――本書のテーマは環境問題とEV(電気自動車)。この構想はいつから描いていたのですか。

高嶋 環境問題は大学生のときから関心はありました。大気汚染、海洋汚染、山林破壊などから始まって、それが地球温暖化になり、脱二酸化炭素につながります。地球温暖化の影響は世界の各地で出ています。台風はより大型になり、頻発に発生。猛暑、大雨とそれに伴う洪水も増えています。このまま温度が上昇すれば日本が熱帯になり、今までなかった伝染病がはやることもあり得ます。ICPP(気候変動に関する政府間パネル)では、明確に気候危機と宣言し、人間の活動が地球温暖化を引き起こしたと明言しました。そして現在、世界の流れはCO2を出す車の電動化です。欧米では2030年頃から、エンジン車の新車販売禁止を打ち出しました。これにはハイブリッド車も含まれます。

EV化は「理屈」ではなく止められない「流れ」

――本書は日本経済への叱咤激励とも読めます。半導体も液晶テレビも海外メーカーにコテンパンにやられた苦い過去がありますね。

高嶋 半導体の失敗は、政府の責任が大きいと思います。アメリカの力に屈したと言うか…。世の中には「理屈」では理解できないことが多くあります。この『EV』への移行は、止めようがない「流れ」です。ハイブリッド車、コンバインドサイクル発電など、日本には環境に優れた技術が多くあります。どちらも非常に高効率の優れた技術ですが、世界では、「化石燃料を燃やし、二酸化炭素を出す」ということで、ネガティブに捉えられます。その根底にあるのは地球温暖化です。日本ももっと、深刻に受け止めるべきです。

――本書から読者には何を感じ取ってほしいですか。

高嶋 コロナにも当てはまることですが、「日本は世界の中の一国」という意識を忘れないことが大切だと思います。世界はつながっているということ。地球温暖化防止は世界が協力して対処しなければなりません。もっと、世界に目を向けてほしい。自動車のEV化は、「理屈」ではなく、止められない世界の「流れ」なのです。

(聞き手・写真/加藤慶)

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