『世界を動かす「闇の支配者」陰謀大全』(宝島社/本体価格1100円)~本好きのリビドー/昇天の1冊

インターネットの世界では現在、「Qアノン」と呼ばれる人々がさまざまな陰謀論を展開している。彼らの主張で代表的なのは「ハリウッドの著名人、ユダヤ人の金融資本、米民主党の政治家の一部は小児性愛者・悪魔崇拝者であり、ドナルド・トランプはそいつらと戦う英雄」だというもの。

荒唐無稽といえばそうだが、一笑に伏すこともできない。このような陰謀論は他にも数多くあり、どれもが大衆から、一定の支持を得ている。

『世界を動かす「闇の支配者」陰謀大全』(宝島社/1100円+税)は、闇世界で暗躍する支配者たちの謀略・策略の数々をまとめた1冊だ。イルミナティ、ロスチャイルド、フリーメイソン、ファーウェイ、ディープ・ステートなどの団体や集団の名がずらりと並ぶ。そして、かつては「都市伝説」の類だった陰謀論が今や現実となりつつあり、この世を操っている…と。

コロナの流行=ビル・ゲイツの仕業!?

マイクロソフトの創始者、ビル・ゲイツが、新型コロナのワクチンにマイクロチップを埋め込み、人々を監視しようとしているという説も掲載。もちろんゲイツ本人は否定しているが、反論すればするほど「怪しい」とばかりに、米国ではコロナの流行=ゲイツの仕業というのが一人歩きしている。

今後起きる現実も、すべてカネと権力を持つ者たちの陰謀であり、「信じようが、信じまいが、あなたには関係ない」まま、進展していくと説く。陰謀論が跋扈する不透明な時代にわれわれは生きている――どうやら、それだけは確かなようだ。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)