
プロレスにおいて「真剣勝負」とは実にデリケートな言葉で、その時の状況や発言者の意図によって、プラスにもマイナスにも受け取られる。
では、UWFインターナショナル時代の田村潔司が髙田延彦に訴えた「真剣勝負」とは、どのようなものだったのか。
1991年に旗揚げされたUWFインターナショナルは、従来のプロレスファンからもUWFファンからも、どこか疎まれるようなところがあった。
第2次UWFでは前田日明に人気、格付けともに及ばず、実力的には船木誠勝など若手から追い上げを受けていた髙田延彦が、唐突に「最強」を名乗っていいものなのか…。
「古き良き時代のプロレスを現代に蘇らせる」「プロレスの原点回帰」といったUインターの方針は、今なら理解されるだろう。
しかし、当時は多くのファンが「UWF=真剣勝負の格闘技」と考えていたこともあり、そこから分派したUインターがプロレス色を強めたことで、かなりの違和感があったのは事実。
それでも髙田が北尾光司やスーパー・ベイダー(ビッグバン・ベイダー)と激戦を繰り広げたことによって、徐々に団体への信頼が高まり、派手なビッグマッチも開催されるようになった。
しかし、1994年の後半になると、髙田はベイダー、ゲーリー・オブライトに連敗。さらに安生洋二がグレイシー道場でヒクソン・グレイシーにボコられる事件が勃発したことも重なり、徐々に団体の雲行きが怪しくなってくる。
納得できなかった髙田延彦の振る舞い
95年6月18日、両国国技館大会のメインイベントで垣原賢人を下した髙田は、試合後のリング上で「極めて近い将来、引退します」と宣言。その直後には、7月の参議院選挙に『さわやか新党』から比例区で出馬することが発表された。
団体の社長兼エースであったにもかかわらず、あまりに身勝手な振る舞いのようにも映るが、これには髙田なりの事情もあった。94年に入ったあたりから、ビッグマッチ中心の運営による経費増大で、Uインターの経営は悪化。リング上の盛況とは裏腹に、髙田には金銭面も含めて多くの負担がかかっていたという。
その一方で94年1月、タレントの向井亜紀と結婚。4月からは『スポーツWAVE』(フジテレビ系)でキャスターを務めるなど、髙田には新しい道が開けてきた。そうした時に、「借金を背負わされながらプロレスを続けるよりも、タレントとして成功したい」となっても不思議はあるまい。
しかし、それに納得できないのは、リングで戦い続ける選手たちである。
中でも次期エースと目されていた田村潔司は、髙田の引退発言を伝え聞くと、「逃げられた感じ」と辛らつに批判。髙田が参院選出馬のため欠場した際は、4大会連続でメインを務めると、8月大会でオブライトに勝利を収めたリング上から、「髙田さん、僕と真剣勝負をしてください!」と訴えかけた。
これは突発的なものではなく、髙田への挑戦はそれまでにも口にしていたことだったが、問題とされたのは「真剣勝負」の文言であった。
田村が暴走したようにも思えるが…
田村はいったい何を考えていたのか。いわゆる「何でもあり」の試合をしたいということか。あるいは当時、水面下で新日本プロレスとの対抗戦が画策されていたことから、「新日とは別に、Uインタールールで戦いたい」ということだったのか。
しかし、田村の意図がどうであれ「真剣勝負」と聞けば、「では、これまでのUインターの試合は真剣勝負ではないのか」と思われても仕方がない。
田村はその後、新日との対抗戦参戦を拒否したこともあって、出場停止&給料ストップとなり、Uインターを退団。前田率いるリングスへ移籍する。
このような経緯だけを振り返れば、田村が暴走したようにも思えるが、謎なのは「真剣勝負」発言のあったとき、先に試合を終えていた髙田が、わざわざ会場の後方で田村の試合を見ていたことである。
これは田村がオブライト戦の前に「僕とゲーリーの試合をリング下で見てくれませんか?」と要求したことに応えたものだったが、この当時の髙田が後輩の身勝手な頼みを素直に聞くとは思えない。ということは、田村の発言は団体として用意したアングルの一環ではなかったか。
新日との対抗戦の交渉を進める一方で、もしそれが不調に終わったときのために、「髙田引退→田村にエース継承」というアナザーストーリーも並行して準備していた可能性はありそうだ。
もしそうであれば、田村の言った「真剣勝負」とは、「髙田の進退を懸けた重要な試合」との意味合いだったとも考えられるのだ。
《文・脇本深八》
田村潔司
PROFILE●1969年12月17日生まれ。岡山県岡山市出身。身長180センチ、体重84キロ。 得意技/ミドルキック、ローキック、前蹴り、腕ひしぎ逆十字固め、アキレス腱固め。
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