スマートシティ=次世代環境都市が本格始動!~企業経済深層レポート
日本各地で「スマートシティ(次世代環境都市)」という名称の街づくりが急ピッチで進んでいる。
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自治体単位でプロジェクトを推進しているほか、巨大企業のトヨタ自動車が富士山の裾野で建設に着手した『ウーブン・シティ』など、まったく新しい都市をつくる動きもある。
そんな中、この秋には東京・豊洲で、スーパーゼネコンの清水建設がスマートシティの一部施設を完成させ、官民から大きな注目を集めている。それが『ミチノテラス豊洲』だ。
この施設の詳細に触れる前に、そもそもスマートシティとはどんな都市を指しているのか、金融系研究機関の研究員が解説する。
「2010年ごろから世界各地で盛んになった新都市計画です。近年、世界的に人の流れが大都市へと集中しており、そのため大都市の消費電力は右肩上がりで、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量も増え続けている。それらの課題をICT(情報通信技術)やAI(人工知能)、再生可能エネルギーやロボット、自動運転などの新技術を活用しながら解決し、さらに発展させようという街づくり。それがスマートシティ構想です」
有名な事例としては、中国の杭州市(浙江省)が挙げられる。都市問題専門の大学准教授が言う。
「杭州市は渋滞などの交通問題を抱えていた。そこでAIが、市内に張り巡らされた防犯カメラの映像をリアルタイムで分析し、都市全体の信号機を操作することで、全体的な渋滞を緩和することに成功しました」
シンガポールは「スマート国家」を目指している。
「デング熱対策のため、蚊の繁殖状況をICTで確認し、ドローンで殺虫剤を散布するなど、あらゆる問題がIT化の下、迅速かつ適切に解決する試みがされています」(同)
ビル全体に施される最先端のICT機能
ミチノテラス豊洲には、どんな特徴があるのか。国土交通省の関係者が言う。「日本でも19年に国交省が旗振り役となり、官民共同でスマートシティのモデル事業地域を選定しました。北は北海道の札幌から、南は愛媛県の松山市まで全国15カ所です。東京・豊洲地区を対象にした『豊洲スマートシティ』も、先行モデルプロジェクトの一つに選ばれ、ミチノテラス豊洲はその核となる施設です」
今回、一部が完成したミチノテラス豊洲には、清水建設が総事業費600億円を投じており、単独では過去最大規模の事業だという。場所は築地から移転した中央卸売市場のすぐ近くで、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の「市場前駅」周辺一帯だ。
ミチノテラス豊洲は、オフィスビルとホテル、バスターミナルなどで構成される複合施設の名称で、この秋には12階建てのオフィスビル『メブクス豊洲』が開業している。不動産関係者が言う。
「最先端のICT機能がビル全体に施され、ロボット運用、顔認証、AI処理などが、いとも簡単にこなせる。しかも、ワンフロアが約1400坪から2000坪もある巨大スペース。東京駅から4キロ圏内と立地条件もいいことから、早くも人気を呼んでおり、すでに全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)などが入居を決めています」
メブクス豊洲に隣接するのが582室を擁する14階建てのホテル『ラビスタ東京ベイ』で、来春オープンを目指して建設中だ。ホテル最上階に大浴場、エステ、プール、アスレチック施設を備え、東京湾を望める都市型リゾートホテルになるという。
日本初となる大都市型の道の駅
この2つの施設の間には、交通広場と称したバスターミナルが広がり、都心と接続する東京BRT(バス高速輸送システム)や、羽田・成田空港と接続する高速バスなどが続々と集まってくる計画だ。建築設計の関係者が明かす。「このバスターミナルのさらなる特徴は、上部にビルをつなぐ空中広場がある点で、これが『ミチノテラス』と呼ばれる部分です」
このミチノテラスには大デッキが張られ、広大なオープンスペースとなる。そこにはコーヒーや土産物、簡単な食事や野菜、魚介類などを扱う移動型販売店も配されるという。観光客やビジネス関係者らの憩いの場となる予定だ。
ミチノテラス豊洲のさらなる構想について、地元の観光業関係者が言う。
「清水建設では、ミチノテラス豊洲の施設がある一帯、つまり、ゆりかもめの市場前駅、メブクス豊洲、バスターミナル、ミチノテラスなどの広場、ラビスタ東京ベイ、さらには豊洲ぐるり公園(晴海運河側)などの結束点として、日本初となる大都市型の道の駅『豊洲MiCHiの駅』を整備しています」
ミチノテラス豊洲をデジタル尽くしの堅苦しいイメージだけでなく、多くの来訪者が訪れ、親しんでもらう新たな観光地としても盛り上げていく方針だ。
いずれにしても新しい試みに挑み、始動したミチノテラス豊洲には、現在、日本全国で進められているスマートシティ建設のモデルケースとして、熱い視線が注がれている。
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