社会

トランプ大統領が居座る恐怖~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎(C)週刊実話Web

10月26日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価が大幅続落し、前週末比650ドル安で取引を終えた。日本のメディアは、欧米で新型コロナウイルスの感染者が急増していることを理由に挙げている。

それも1つの理由だろうが、もともと今の株価は、経済実態を反映しない高値になっていて、その調整かもしれない。バブルが崩壊し始めた可能性もありだ。

ただ、私は、アメリカ大統領選挙で、(この時点で)民主党のバイデン候補が勝利する可能性が高まっていたことが、株価下落のきっかけになったのではないかと考えている。

トランプ大統領は、財政規律を無視して景気対策を行ってきた。そのため、9月に終了した2020会計年度において、米国の財政赤字は330兆円に達している。バイデン氏が当選すれば、財政の引き締めにかかるだろうから、短期的には米国の景気は失速する。もちろん、トランプ大統領のように地球環境を無視した政策を続ければ、地球が壊れてしまうから、私はバイデン候補の当選を望んでいた。

大統領選挙の混乱がバブル崩壊に結び付いて…

アメリカの大統領選挙は、投票所の開票速報を見て、票数の少なかった候補が敗北宣言を行い、そのうえで全国民の大統領として新大統領が選ばれるのが慣例になっている。しかし、トランプ大統領は投票の集計に異議を申し立て、延々と選挙を引き延ばそうとしている。

大統領選挙の確定が長引けば、新大統領は政策の準備に着手できない。それどころか法廷闘争になり、郵便投票が無効という判断を最高裁が下せば、民意と異なる大統領が誕生するかもしれない。

トランプ大統領は、最高裁判事にバレット氏を送り込むことに成功しており、9人の判事のうち6人が保守系になっている。常識外の「郵便投票無効」という判決が出ることも否定できないのだ。

結果がどうなるのか、今の段階では何とも言えないが、こうした大統領選挙の状況が、経済を揺さぶるのは確実だろう。10月26日の株価暴落は一過性のもので、すぐに元に戻るという見方が支配的だが、大統領選挙の混乱が本格的なバブル崩壊に結び付いていくことも十分にあり得る。

新型コロナウイルスの感染拡大とバブル崩壊が同時に重なれば、経済は大混乱に陥るだろう。とりあえずは、大統領選挙の結果が(完全に)出るまで、投資を手控えるというのが、賢明な投資家がとるべきスタンスではなかろうか。

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