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アントニオ猪木「こんなプロレスを続けていたら、本当なら10年持つ選手生命が1年で終わってしまうかもしれない」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”
今年1月から難病の「全身性アミロイドーシス」で入院、一時快方に向かうが6月には腸ねん転で再入院していたアントニオ猪木。それでも8月末には、自身のYouTubeチャンネルで退院を報告するなど、いまだ「燃える闘魂」には驚かされることばかりだ。
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今年9月11日、『日本プロレス殿堂会』により、殿堂入り選手が発表された。アントニオ猪木、ジャイアント馬場、藤波辰爾、ジャンボ鶴田、長州力、天龍源一郎の6人で、同月14、15日に開催された日本プロレス史70周年記念大会『LEGACY』(レガシー)において表彰式が行われた。
日本プロレス殿堂会とは、藤波の長男でプロレスラーのLEONA、長州の娘婿で個人事務所『リキプロ』の池野慎太郎代表、天龍の長女で『天龍プロジェクト』の嶋田紋奈代表の3人が中心となって設立されたもの。同会は一過性のイベントを目的としたものではなく、永く将来にまで続く日本プロレス殿堂の運営を目指しているという。
日本プロレス殿堂会は、国内主要団体やプロレス関連メディアからしっかり後援を得ており、将来的には日本プロレス界におけるコミッショナー的存在となる可能性もありそうだ。
この表彰式に、猪木はビデオメッセージの形で参加。8月末に長期の入院生活から退院したばかりで、来場こそかなわなかったが「元気ですか!」「1、2、3、ダー」とお決まりのフレーズを披露し、会場を盛り上げている。
入院中にYouTubeで公開された映像では、一時、リアルに死を感じさせるほどの衰えようだったが、この時の映像では以前と遜色のない元気そうな姿を披露している。
伝説となった「首で支えるジャーマン」
そんな猪木が「こんなプロレスを続けていたら、本当なら10年持つ選手生命が1年で終わってしまうかもしれない」と語ってから、間もなく半世紀を迎えようとしている。1974年3月19日、国際プロレスを退団したストロング小林との「エース対決」を制した直後のコメントで、この試合のフィニッシュとなった猪木のジャーマン・スープレックス・ホールドは、先に猪木の頭がマットに着き、120キロ以上もある小林の全体重を首とつま先だけで支えて投げつける危険なものであった。
この時に猪木は、小林がバックドロップを食らってフラフラと立ち上がったため、その背後に回ってしっかり腰を落としてクラッチしている。しかし、そのために技の始動が低い位置となり、投げている途中で猪木の頭が先にマットに着いてしまったという、つまりは「失敗技」であった。
ただ、失敗とはいえブリッジが崩れたわけではなく、そんな危険なシチュエーションだったからこそ、いまだ伝説として語られる強烈なインパクトを残したわけで、そうして考えると猪木は、あえて狙って「首で支えるジャーマン」を放った可能性もある。
一部には「小林の体重を持ち上げきれなかった」との声もあるが、猪木は前年にも身長190センチ、体重115キロのマッチョ選手、ターザン・ジャコブスにジャーマンを決めていて、単なる重さによる失敗とは考えづらい。
ともかく、並の鍛え方ならそのまま首を故障しても不思議ではなく、前述した「1年で終わってしまう~」とは、そんな猪木自身の実感もあっての言葉だったのかもしれない。
過激なプロレスを象徴する言葉として定着
ちなみに実際のコメントは、「チャンピオンはね、いつでも闘って負けることもある。これは宿命なんですね。まあ、私も本当ならば10年持つ選手生活も1年で終わってしまうかしれない。しかしそれがね、ファンに対しての我々の義務だと思うんです」というものだった。これが後年、メディアで「こんなプロレスを続けていたら~」と分かりやすく換言され、古舘伊知郎が実況において披露したことで、過激なプロレスを象徴する言葉として定着したと思われる。
実際、この時期の猪木は、選手生命が1年で終わっても仕方がないような闘いを繰り広げており、だからこそ、この言葉が光ったところもあっただろう。
小林戦と同年には、タイガー・ジェット・シンとの〝腕折り〟凄惨試合や、大木金太郎との遺恨マッチが行われ、翌75年には、今も猪木のベスト・バウトとして名高いビル・ロビンソン戦、そして、76年には格闘技世界一決定戦として、ウィレム・ルスカ戦、モハメド・アリ戦を実現させている。
結局、猪木の引退は「1年で終わってしまう~」の発言から24年が過ぎた98年となったわけだが、これは試合を中継するテレビ朝日や地方の興行主などの要求に応じて、現役を引き延ばした事情もあっただろう。
引退後の現役復帰にまるで感心がなかったことを見ても、猪木の本心には「仮に、この一戦で終わったとしても…」という気概があったに違いない。
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