「空飛ぶクルマ」に世界が注目! 3年後に実用化!? ~企業経済深層レポート

「ジョビー社は09年に設立され、NASA(アメリカ航空宇宙局)と提携して電動垂直離陸機の開発を進める有望企業です。トヨタは18年に豊田章男社長が、車オンリーメーカーからの脱却を宣言。未来への生き残りを図るため、あらゆるジャンルに事業領域を拡大する方針で、その流れの中での出資でしょう」(投資コンサルタント)

また、東京大学発のベンチャー企業「テトラ・アビエーション」も、今年8月、米ボーイング社が後援する個人用航空機の開発コンペ「GoFly」において、最も革新的な機体を開発したとして賞を獲得し、一躍注目を集めている。

「世界で空飛ぶクルマの開発メーカーは、有力企業だけでも100社を超えている。先行するドイツのボロコプターは、昨年10月、シンガポールで有人試験飛行に成功し、実用化に大きく前進している。中国の億航ホールディングスも、今年9月、有人飛行ドローンの実験に成功しているが、いずれにしても各社3~5合目の段階で、これからが本当の勝負になるでしょう」(経済アナリスト)

そのため、日本政府も空飛ぶクルマの産業化に向け、環境整備を急いでいる。国土交通省と経済産業省は、2023年を実用化目標に設定し、官民での議論と技術向上に力が入る。しかし、日本企業の最大のハードルは、安全性の確保と資金面にあるという。

厳しい制度づくりが弊害!? 中国に先を行かれる危惧

「墜落リスクがあるだけに、航空機やヘリコプターと同等の厳しい基準が求められる。さらに、空域の選定も難しい。エネルギーの基本はバッテリーなので、充電開発や充電ステーションの充実も必至となるなど、課題は山ほどある」(ベンチャー企業の関係者)

その一方で、厳しい制度づくりを目指して慎重になりすぎれば、実用化に意欲的な欧米や中国に先行されてしまう。国のガイドライン設定次第では、日本の空飛ぶクルマ事業が全滅する恐れもあるという。

「本格的な空飛ぶクルマを1機開発するまでは、100億円以上の開発資金がかかるとも言われる。スカイドライブが8月に募った第三者割当増資でも、集まった額は40億円前後。これでは世界のメーカーが数百億、数千億を集める中で、技術格差が生まれてしまう」(同)

現状で技術力や個人の能力では、日本の空飛ぶクルマ開発は世界と対等、もしくはそれ以上だという。だが今後、制度設定と資金力で差が出るというのでは、未曾有の発展を遂げてきた〝技術大国〟の名も吹き飛んでしまうだろう。