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北朝鮮人民軍“暴走”リスク…実戦兵器連続発射は開戦の火種!?

(画像)WAYHOME studio / shutterstock

北朝鮮が9月11、12両日に、新型長距離巡航ミサイルの発射実験を実施した。

さらに15日には、日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射し、日本のEEZ(排他的経済水域)内に着弾。北朝鮮がミサイルを発射するのは3月以来で、軍事力の強化を着実に進めていることをアピールした格好だ。

金正恩総書記は今年1月に開催された朝鮮労働党第8回党大会で、これまでの党の政治的成果と今後の方針を報告しているが、軍事分野に言及した際、「中・長距離巡航ミサイルをはじめ先端核戦術兵器を次々と開発する」と述べている。

「今回の巡航ミサイルは2時間以上飛行して、1500キロ先の目標に命中したとされており、事実であれば日本のほぼ全土を射程に収めたことになります。日本は従来の核弾道ミサイルに加えて、さらに核巡航ミサイルにも備えなければなりません」(軍事ライター)

しかも、今回の巡航ミサイルについては、いまだに発射地点が特定されていない。これが割り出せなければ、緊急時に迎撃の対応が遅れることになる。

「巡航ミサイルは低速度ですが、命中精度が極めて優れています。発見できれば比較的容易に撃ち落とせますが、通常は低高度を進むので、目前に現れるまでレーダーに探知されにくい」(国際ジャーナリスト)

今回の巡航ミサイルの形状や性能を分析すると、中国軍の『紅鳥2型』や米軍の『トマホーク』に類似している。おそらく中国を経由した米国の技術が、北朝鮮に流れているのだろう。

また、巡航ミサイルには、飛行経路に沿った地形の標高データが必要だが、北朝鮮が偵察衛星を使って日本の地形データを割り出すことはできない。こちらも中国から、データを入手しているとみられる。

持ちこたえられるのは首相官邸の地下だけ!?

日本の首相官邸や国会議事堂、議員会館を狙えば、政治機能は完全に麻痺する。450キロの通常弾頭であっても、国会議事堂や議員会館は爆破され、なんとか持ちこたえられるのは首相官邸の地下ぐらいである。

「今回のような巡航ミサイルに対抗するには、低高度から中高度の対応能力が必要ですが、現状の航空自衛隊や陸上自衛隊の防空システムではなかなか難しい。主要都市および自衛隊と米軍の基地を守るために、多数の地対空誘導弾が必要になります」(同)

一方、短距離弾道ミサイルのほうは、すでに存在が知られている。ロシア製の『イスカンデル』を大型化した『KN23』である。北朝鮮は2019年5月に同ミサイルを初めて発射して以降、飛行距離や精度などの改良を続けており、今年3月にも日本海に向けて発射実験を行っている。

「弾道ミサイルは低い角度で発射され、下降後に機首を持ち上げるプルアップ機動で滑空し、飛行距離を伸ばします。今回の最大高度は50キロですから、高度70キロ以上でないと迎撃できない自衛隊のイージス艦では対処できません」(前出・軍事ライター)

今回は飛行距離も750キロと伸びており、北朝鮮の南東端から発射すれば、岩国や佐世保の米軍基地などは射程に入りそうだ。

また、北朝鮮が鉄道を使ってKN23を移動させたことも驚きだった。

「レーダーや航空兵力が発達した現在、事前にレールや鉄橋を破壊すれば、従来の列車砲や列車ミサイルは使えなくなる。そのため、同種の兵器を導入している軍隊は世界にありません。北朝鮮は近年、無限軌道型車両の開発を進めてきましたが、これにも矛盾する動きです」(同)

時代遅れの専守防衛原則見直しが急務

日本が北朝鮮からの脅威に対処するには、弾道ミサイル防衛システムの整備にとどまらず、敵基地攻撃能力の保持を自衛隊に認めることが検討課題となってくる。さらには、時代遅れの専守防衛原則を見直すことも必要だろう。

そもそも今年に入ってからの北朝鮮の対日バッシングは、尋常ではない。ほぼすべてが「日本は戦争の準備を進めている」という論調だ。

「その延長線上で米軍と連携する自衛隊の動きや、日本の軍備状況についても過敏に反応している。加えて13日、IAEA(国際原子力機関)定例理事会の冒頭声明で、北朝鮮が7月初めから寧辺の黒鉛減速炉(核施設)を再稼働させたことが明らかになりました。長距離巡航ミサイルに核爆弾を搭載する方向へ、着々と進んでいるのです」(同)

相次ぐミサイルの発射実験で注目されたのが、正恩氏の不在だ。巡航ミサイルは新型兵器であり、弾道ミサイルは新たに編成された鉄道軌道ミサイル連隊による発射だったが、正恩氏は視察をしていない。新兵器開発に強い意欲を示してきた正恩氏としては、異例の静観ぶりだ。

正恩氏の代わりにミサイル発射実験を指導したのは、降格人事から一転、復権を果たした朴正天党軍事委員会副委員長だった。これまで「指導」は正恩氏だけの専売特許だったが、朴氏が取って代わったことで、軍内部で強硬派の力が強まっている可能性もある。

正恩氏の妹である金与正党副部長は、15日の談話でミサイル発射実験に言及し、堂々と「自衛的な活動」と開き直った。

与正氏は日米韓からの脅威に対抗するため、ミサイル発射実験や核開発をしていると述べたわけで、その意味では北朝鮮の姿勢は、まったく揺らいでいない。

もう日本に平和ボケは許されないのだ。

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