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マッチ、たけし、ピン子…「日大背任疑惑」田中理事長“取り巻き”芸能人脈

(画像)Krakenimages.com / shutterstock

日本一のマンモス大学である日本大学(学生数=約7万3000人)の付属病院建設工事を巡り、同大学の関連会社『株式会社日本大学事業部』(東京都世田谷区)の幹部が巨額の不透明な資金を外部に流出させた疑惑が持ち上がった。

9月8日以降、東京地検特捜部は背任容疑の関連先として、日大本部(千代田区)や田中英寿理事長の自宅(杉並区)などを家宅捜索した。特捜部はすでに田中理事長を任意で事情聴取している。田中理事長は「流出は知らない。金も受け取っていない」と否定しているが、特捜部の狙いは〝田中利権会社〟と揶揄されている日本大学事業部の金の流れの全容解明であることが捜査関係者への取材で明らかになった。

「昨年、日大は老朽化した日大医学部付属板橋病院を建て替えるため、都内の設計事務所に20億円超で設計を発注した。病院建て替えは日大創立130周年記念プロジェクトの一環です。その契約の過程で不正資金流出があった。日本大学事業部の取締役で日大理事も兼務するI氏が、発注した約20億円のうち約2億円を大阪の医療法人『Kグループ』の関係先に移動させ、そして約1億円をキックバックさせた疑いが持たれている。Kグループ代表のY氏は田中理事長と日本相撲連盟副会長つながりで面識があり、安倍晋三前首相ともゴルフ友達です」

と語るのは捜査関係者。

「I氏は、田中理事長夫人に取り入った実姉のH女史と共に日本大学事業部を牛耳っている。日大のあらゆる利権を貪り、その金の一部を田中理事長側に上納してきた疑惑もある」(同)

あの悪質タックル事件で暗躍した人物…

日本大学事業部は2010年に日大が100%出資して設立した株式会社だ。業務としては学内の物品の調達や施設の管理・運営を行っている。法人登記には「医薬品、医薬用品の販売」「日用品雑貨、文房具の販売」「旅行業」「洗濯業」「冠婚葬祭業」「美容院の経営」「下宿業」「建物の建設工事」「保険代理店業」「広告業」と記載されており、事業目的は多岐に及んでいる。

日本大学事業部の14年12月期の売上高は前年比1.6倍となる約13億円を記録。19年は売上高約90億円と急激に業績を伸ばしているのだ。

「田中理事長は日本大学事業部の取締役ではありませんが、側近ら複数の理事が取締役を務めている。その中で、実権を握っているのは田中理事長に寵愛されているI氏。彼はアメリカンフットボール部の悪質タックル事件で暗躍した人物ですよ」(日大OB)

18年に関西学院大学との試合で日大アメリカンフットボール部部員の悪質タックルが社会問題になった。日大アメフト部OBのI氏は選手に対し、内田正人監督(当時)らの関与がなかったと説明するように求め、「(同意すれば)一生面倒をみる。そうでなかったときには日大の総力を挙げて潰す」と恫喝。口封じを図ったことが明らかになって、理事を辞任した。しかし翌年、早くも役員、昨年9月には理事に復活し辣腕を振るっていた。

「I氏は高校時代から大学までアメフトで活躍した選手なので、相撲部出身の田中理事長とは接点がなかったんですが、アメフト部先輩の内田元監督に紹介されて、かわいがられるようになった。日本大学事業部設立時から理事長付相談役として中心的な役割を果たしていた。出入り業者に無理難題をふっかけていたのは日常茶飯事。その頃から保険会社に利益供与を依頼してトラブったという噂も絶えなかった」(日大出身のフリーライター)

元演歌歌手の田中理事長夫人は〝日大の女帝〟として君臨。田中理事長が唯一、頭が上がらないのが夫人とされ、その夫人に取り入ったのがI氏の実姉のH女史だったのだ。彼女は日大広報プロジェクトを仕切る広告代理店代表だ。

特捜部は動かぬ証拠を握っている!?

「H女史の代理店は学生を集めるための広告だけでなく、ゴルフ番組を制作したり、元ジャニーズ事務所のマッチこと近藤真彦のレーシングチームの広告代理店も担当している。H女史は芸能人ともパイプがある。マッチ、ビートたけし、泉ピン子などといった大物芸能人との人脈を持っています」(業界関係者)

H女史は芸能界人脈をフルに活かして、元演歌歌手の理事長夫人の信頼を勝ち得たのかもしれない。

「理事長夫人は阿佐ヶ谷で『日大奥の院』と呼ばれているちゃんこ料理店を経営しています。夫人に寵愛されているH女史は、日本大学事業部の幹部らを店に呼びつけて自分の力を誇示する場にも利用していた。この店は悪質タックル問題の際の密談場所にも使われていた。ちなみに、グルメサイト『食べログ』の評価は3.05となっています」(前出・日大OB)

日大を巡る不正資金流出疑惑については、10年前から一部メディアが精力的に取材に動いていたが、事件として表面化することはなかった。

「特捜部は田中理事長の自宅はもちろん、I氏が所有するマンションや大阪のKグループ関係先などにもガサ入れしている。田中理事長はアメフト悪質タックル問題では辞任要求を突きつけられながらも、〝頬かむり〟して逃げ切りました。事情聴取に『金は受け取っていない』と関与を否定していますが、特捜部は動かぬ証拠を握っている。今度こそ、年貢の納め時ですよ」(前出・捜査関係者)

マンモス大学の膿を全部出し切るメスは入るか。

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