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『オショロコマ』北海道斜里町/知床産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

知床はウトロ漁港にて、カレイを狙った前回、高水温の影響からか本命は不発。

代わってエゾメバルに遊んでもらう結果となりました。カレイ狙いでよく交ざる、アブラコ(アイナメ)も全くだったこともあって、どうやら海の状況は本調子ではないようです。

そこで今回は、再びアテもなくどこぞの川で竿を出してみることにしました。大自然に溢れる知床半島には、幾つもの小河川や沢が海に流れ込んでおり、そういった川を巡ればワタクシのような渓流素人でも、ウブなヤマメとお遊びが楽しめるのではないかと。本土の人気河川などのスレた渓魚は、ワタクシなんぞ相手にしてくれませんからねぇ。ま、その〝ツレなさ〟がまた快感でもあるんですけれど。

さて、知床は公道でもヒグマとの遭遇率が高い地域ですから、注意深く車を走らせるうちに、河原へと降りやすそうな沢が目に入りました。本格的な渓流釣師と違い、作業着&運動靴という装備ゆえに、この「入渓のしやすさ」というのはワタクシにとって重要事項なのであります。

車を降り、周囲にヒグマがいないことを確認。念のため「たけしぃ~!」と叫びながら河原へ降ります。ヒグマとの遭遇を避けるには、こちらから気配を積極的に発信することが大切。かつ、ヒグマから「アイツ、一人でな~に訳の分がんねぇこと言ってんだべ?」と思われないためには、この〝友達を呼んでるフリ作戦〟が、かなり有効なのではないかと思われます(多分)。ただし、当該ヒグマが〝たけし〟という名前だった場合、逆に呼ばれていると勘違いして出てきてしまうリスクもあるかもしれません。

ちなみに、男性釣師が女性の名前を呼ぶと、万一、当該ヒグマと名前が一致してしまった場合、ペアのオスにあらぬ疑いを抱かせてしまう可能性も考えられるので、異性の名前を呼ぶのは避けたほうが無難かもしれません(多分)。

山奥まで深追いして釣れたのは…

「ようすけ~っ」と叫びながら竿を片手に沢を釣り上がりますが、予想に反して魚からの反応は一向にありません。釣れないとついつい深追いしてしまうのが釣り人の悪いクセ、怖い気持ちを抑えつつ釣り上がるうちに、気が付けば結構な山奥まで来てしまいました。森の木々に囲まれ、聞こえるのは沢の流れる音のみ。マイナスイオンに満ちた最高の雰囲気とはいえ、見通しの悪さは怖いものです。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

「ゆきえ~っ! おっと違った、ともひろ~っ!」沢の音にかき消されないように大きな声で叫びながら、いかにも魚が潜んでいそうな淀みにソッと仕掛けを沈めると、コツッ! と反応があり、反射的に竿を煽るとエサの取られた空バリが返ってきました。「ようやくいたか…」アタリが出るとアツくなるもので、エサを付け替えて再び投入。すぐにゴツゴツッ! とアタリがあり、十分に食い込ませてから竿を煽ります。

グリグリッ! と小気味よい手応えで沢から踊り出た魚は、ん? ヤマメにしてはずいぶん派手なような…。手にしたのは、20センチほどの北海道にのみ生息するオショロコマでした。だいだい色に色づいた腹部、鮮やかな桃色の斑点…可憐な美しさにしばし見とれてしまいます。十分に食い込ませたため、ハリを深く飲み込ませてしまったこともあって、ビクへと入れることにしました。

オショロコマ
オショロコマ (C)週刊実話Web

素朴な甘露煮と骨酒は絶品

ポイントを変えるべく釣り上がりますが、その後も釣れるのはヤマメではなくオショロコマばかり。希少な魚ということもあって、これはワタクシなぞが竿を出すのは実にはばかられます。ハリを深く飲み込んでしまった3尾だけを晩酌の肴として持ち帰らせていただくことにして竿を仕舞い、ウトロの日帰り入浴施設〝夕陽台の湯〟で、ひとっ風呂浴びてから帰路に就くことにしました。

大切に持ち帰った3尾のオショロコマは2尾を甘露煮に、小振りな1尾は骨酒にして晩酌です。ここでちょっとビックリしたのが、オショロコマの鮮やかな桃色の斑点模様が甘露煮にしてもうっすらと残っているということ。自然って不思議ですねぇ。

オショロコマの甘露煮
オショロコマの甘露煮 (C)週刊実話Web

さて、甘露煮を頭から骨ごといただくと、イワナの仲間らしく締まった身質で、若干のクセはありながらも川魚らしく素朴な味わいです。そして、カリカリに焼いたオショロコマを〝流氷浪漫〟ワンカップの熱燗に泳がせること5分。酒が色づいたところでチビリと一口。香ばしい風味でこれは実に旨い! 素朴な甘露煮を肴にオショロコマ酒をチビチビやり、知床の大自然と可憐なオショロコマの姿に再び思いを馳せつつ、気持ちよく酔わせていただきました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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