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山本浩二さんと星野仙一さん〜島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

俺は生まれが広島だから広島東洋カープのファンなんです。漫才ブームの真っ只中に、カープをサポートしている人たちが集まる会があって、呼ばれたことがあるんですよ。

そこには古葉竹識監督がいて「今度、球場に遊びに来なさい」と誘われたのがキッカケで、山本浩二さんを紹介してもらった。後楽園球場で巨人対広島の試合が終わった後、浩二さんと初めて飲みに行きました。

1軒目は、銀座の大人気店だった高級クラブへ連れて行ってもらって、「少ししたら、もう1人野球選手が来るから」と耳打ちされたんです。誰が来るのかな、とソワソワしていたら、星野仙一さんが現れたんですよ。浩二さんと星野さんは東京六大学時代からの親友だからね。

そして、2軒目に行ったのが、六本木のエル・アミーゴという男性だけが働くスナック。俺もたけしとよく一緒に行った店だった。すっかり、お酒が入った浩二さんは「洋七、お前、野球やってたんだろ。ちょっと素振りしてみろ」。席を立って素振りをすると、「そうじゃない。もっと腰を入れて」とか指導して、何度も素振りをやらされた。

星野さんは酒を飲まなかったから、いたって冷静。スナックで素振りさせられる俺の姿を見て、「漫才師に打ち方教えてなんの意味があるんだよ。何度も立ったり、座ったりさせてかわいそうに」と言ってくれたんです。周りのお客さんは大爆笑でしたけどね。

直々ノックのショータイム

そんな星野さんからポジションはどこだったか聞かれたので、「サードで打順は1番でした」と答えると、「ピッチャーの経験は?」と返されて「ないです」。でも、なぜか「投球フォームをやってみて」と催促されて、仕方なくまた立って投げる動作をすると、「もっと肩を開かないと」とダメ出し。それからは延々、投球フォームの繰り返し。それを見ていた浩二さんが星野さんに「お前も一緒じゃないか」と呆れていましたよ。

その後、星野さんは中日監督に就任。ヤクルトとの試合が神宮球場であったから見に行ったんです。星野さんに挨拶すると、「客席じゃなくて、下に降りてこい」と言われましてね。しばらくしたら、「本日は特別イベントがあります。島田洋七さんがノックを受けます」と場内アナウンスが流れた。

俺はプライベートの観戦で来ているうえ、ノックなんて聞いてないよ~。でも、サードの守備に付いて構えると、星野さん直々のノック。手加減はしてくれていたんだろうけど、プロのノックは球速が違います。まったく捕れない。芸人魂に火がついて、面白おかしく倒れたり、飛びついたりしましたね。球場は大爆笑の渦。私服のジーパンは泥だらけになりましたけど。

10球くらいノックを受けて終わると、星野さんが「今日はショータイムをやってもらったから、夕飯をおごる。待ってて」と誘われ、ご馳走になりましたよ。

前にも触れたけど、野球選手と仲の良い芸人はいるかもしれない。でも、俺みたいにキャッチボールしたり、球拾いしたり、ノックを受けたことのある芸人はいないと思うね。それに俺にとっての野球選手は、どんな大物俳優よりスターなんです。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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