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幻のムラブリ族と一緒に過ごす~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web

前回の続きです。『日立 世界ふしぎ発見!』(TBS系)で幻の部族に会うためタイに飛び、ムラブリ族の集落にたどり着いた我々ロケチーム。ムラブリ族は移動を続ける部族なので、定住地はありません。

そこにいた、木の蔓(つる)でかごを編んでいた2人の男は、すべてを断絶していました。「邪魔するな」という、ただならぬオーラが感じられるのです。目の端で僕らの存在は感じているものの、ガイドしてくれた現地人のチョウさんと話すばかりで、こちらには一切目もくれません。

チョウさんを介して「あなたたちと生活を共にしてもいいですか?」と聞いたところ、「ここではダメだ」という返答が。いろんな部族にこのお願いをしてきましたが、断られたのは初めてです。しかし僕らにしてみても、幻の部族と言われる彼らにやっと会えたのに、このまま帰れない。手土産の野豚を渡し、「少し離れた場所にテントを張ってもいいですか?」と聞くと、許可が出ました。とは言っても、テントなんて持参していません。彼らの寝床と同様に大きな葉っぱを集めて屋根にして、竹を柱代わりにして簡易式タープテントのようなものを作りました。

途中、なんと彼らが手伝ってくれたのです。葉っぱを集めるのを手伝ってくれたり、木の蔓で骨組みを補強してくれたり。そうこうしていると、女性や子供が森の中からスッと現れました。実は茂みに隠れていて、我々の行動を確認していたようです。僕らがテントを作っている様子を見て、安心したみたいでした。

今まで出会った部族の中で一番ワイルド

そして訪れた夜。作ったテントは一応、雨はしのげるものの、寒くてとてもじゃないけど眠れません。まんじりともせず一夜を過ごし、迎えた翌朝。彼らは、僕らが持って行った豚をつぶしていました。竹筒に肉を入れ、蒸し焼きにして食べるのです。そこで僕はやっと落ち着き、彼らの全貌を把握できました。総勢で12~13人でしょうか、男はふんどし姿、女性は巻きスカートみたいなものを身につけています。事前に聞いていた「ビッグフットのように全身毛だらけ」という情報は、全くのウソでした。ただ今まで出会った部族の中で、一番ワイルドだったことは確かです。

野豚はとても大きく、たくさんの焼き豚ができていました。僕らは前日から何も食べていません。「少しはお裾分けしてくれるかな」と待っていましたが、肉はなくなってしまいました。のちに「お前が〝くれ〟と言わなかったからだ」と言われて、思わず納得です。言葉がなくても相手に分け与えてくれるのは、日本人くらいでしょう。

食後、突然彼らは慌ただしくなりました。どこかに出かけるようなので、同行していいか尋ねると「好きにしろ」とのこと。冷たく聞こえますが、初対面でのすべてを拒絶するオーラに比べたら温かみすら感じます。僕は、彼らに付いて行くことにしました…。(つづく)

原田龍二1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

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