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蝶野正洋『黒の履歴書』~『笑ってはいけない』ビンタ「やりたくない」

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

BPO(放送倫理・番組向上機構)が、「放送と青少年に関する委員会」を開き、そこで「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー番組」について審議することになったという。

この「痛みを伴うバラエティー番組」でイメージされるのが、年末恒例の『笑ってはいけない』シリーズ。その中でも代表的な罰ゲームが「蝶野ビンタ」ということになっているみたいで、「今年の年末はどうなるんですか」「もうビンタしないんですか?」という質問が俺のところにきたよ。

とはいえ、この問題はまだ「審議の対象」になっただけで、具体的な番組名も挙がってないし、何か結論が出たわけでもない。それに、今年も『笑ってはいけない』をやるのかも知らないし、現時点ではオファーも来てないから、あのビンタがどうなるかなんてことは分からない。

個人的には審議でビンタ禁止になるなら大賛成だね。これはいろいろなところで言ってるけど、俺はあんなことやりたくないんだよ。そもそも俺はビンタが得意技でもないし、嫌がる相手を押さえつけて罰を与える役なんて楽しくない。

ただ、マネジャーが間違ってオファーを受けたり、毎年いろいろあってビンタしなくちゃいけない流れになるから、渋々やってるだけなんだよ(笑)。

そもそも今回、BPOがこの問題を取り上げたのは、苦痛を笑いのネタにする番組について「不快に思う」「イジメを助長する」などの意見が継続的に寄せられてきているからだという。ただ、これは今に始まったことじゃなく、以前からよく指摘されていたことだ。

プラスの部分はあまり評価されないんだよね

プロレスが「イジメにつながる」と、やり玉に挙げられることもあった。これはイジメっ子をとがめると「プロレスごっこをしてました」って、言い訳するからなんだよ。

真面目に言うと、友達との遊びだろうが、「プロレスごっこ」というものは絶対にしてはいけない。プロレスは、その名の通り鍛え上げられたプロたちがやっている。受け身も取れない素人がやると、ケガするのは当たり前なんだよ。お笑い芸人だって基本は一緒。みんなプロだから罰ゲームが成立している。それを「イジメを助長する」と決めつけるのは、短絡的すぎるような気もするよね。

逆にお笑い番組を見て仲間が増えた人もいるだろうし、イジメられていたけど、プロレスを見て元気になって、生きる希望が湧いたという子供もいるはずだから。そういうプラスの部分はあまり評価されないんだよね。

それに、いくらテレビで規制しても、今の時代はYouTubeに過激な罰ゲーム動画なんていくらでもある。BPOの立場としては、テレビの放送内容だけ規制すればいいんだろうけど、テレビの影響力が下がっているのに表現の規制を強化すれば、ますます〝視聴者離れ〟が起きてしまうんじゃないかと心配になる。

何度も言うが、俺はビンタ禁止に大賛成。ただ、テレビというものは、今までもさまざまな規制をされ続けてきたし、そのたびに新しい表現を生み出してきたという歴史がある。だから『笑ってはいけない』のスタッフも痛みを伴う笑いがダメなら、何か違う笑いを考えてくるはず。いち視聴者として、それは楽しみではあるよね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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