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敬老の日“時間医学”で100歳まで生きる「0円健康法」

(画像) Koldunova Anna / shutterstock

人生100歳時代。

今の医療水準を考えれば、これから100歳の人口はどんどん増加するだろう。厚生労働省の集計によると、2020年の日本人の平均寿命は、女性が87.74歳、男性は81.64歳で、いずれも過去最高を更新。世界保健機関(WHO)に加盟する主要48カ国の中でも、女性1位、男性2位を誇っている。

9月20日は敬老の日。平均寿命が延びたのは、当然、医学の進歩によるところは大きい。しかし、日常生活において健康に対する工夫も必要だ。例えば、「喘息の発作が明け方に起こる」「午前中の方が能率が上がる」等々、われわれが感じている1日の体調の変化は一定の法則に基づいているという。そのことを証明したのが『時間医学』。その第一人者が『生体リズム健康法』(文春新書)の著者である山梨医科大学名誉教授の田村康二氏である。

田村氏といえば、みのもんたが司会を務めた人気番組『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ系)の健康コーナーや、『金曜フォーラム』(NHK教育テレビ)に出演、医療解説が好評を博していた。現在は自ら時間医学に基づいた生体リズム健康法を実践している。

「健康な人なんていません。すべての人は障害者か病人です。病気は遺伝的障害に環境悪化が加わると、発病します。そして、疾患には発生しやすい時間、すなわち〝魔の時間〟があるのです。例えば、気管支喘息は夜明け前、心筋梗塞・脳梗塞は朝、目覚めて2時間以内ということが分かってきました。そして、1つの原因で発症することはなく、いくつかの原因が重なって発症する。魔の時間ができないように生活を工夫することが大切なのです」(田村康二氏、以下同)

生体リズムを知り、常に整えておくことが健康を保つことにつながるのだ。

「まず、夜何時に寝て、朝何時に起きるという自分自身の生体リズムをしっかりと確認することが大切です。その生体リズムに合った規則正しい生活を送る。それを実践することが長寿に繋がると思います。高齢期になると、そのリズムが狂いがちになります。体内時計というのは全身の細胞に埋め込まれているため、薬で調整するのは難しい」

見えない時計遺伝子が内蔵されている

2017年のノーベル生理学・医学賞を受賞したのは、時計遺伝子の発見だった。朝が来ると自然に目が覚め、決まった時間に腹が空き、夜になると眠くなる…。誰にでもある体内時計のメカニズムを解明しており、ほとんどの人間は24時間サイクルで動いている。

「われわれの体はいたるところに、見えない時計遺伝子が内蔵されているとしか思えないのです」

太陽が地平線の下にある、日の出前の光を目に入れると、生体時計は補正されるという。ただ、この時点での体内時計は機械時計より1時間針を前に進めた状態にある。

「そのことを考慮に入れて機械時計に合わせて、1日のスタートを切れば、その日のリズムが正しく働くことになるのです」

ちなみに、朝日を浴びられない人には、市販されている蛍光灯で、波長500ナノメートルの人工のスペクトルを使うことで、朝日を浴びることと同様の効果が得られるそうだ。

「朝の運動、日光浴、乾布摩擦は生体リズムを整えるうえで、とても大切です。是非やってみて下さい」

1日の行動計画によって、その日の朝食メニューを変えることも必要である。午前中から頭脳労働をする人は消化のいい炭水化物中心に摂取するべきで、肉体労働する場合はタンパク質に脂肪が必要だ。

「暗算の速度から頭の冴えている度合いを測ると、午前10時から12時までが最もいい。朝食に必要な900キロカロリーを摂れなかった人は、この時間帯に炭水化物を補給して下さい」

朝食を正餐に夕食は300キロカロリー

田村氏は朝食を正餐にしている。厚労省の統計によれば、朝食を正餐にしている人は約10%で、およそ6割が夕食中心の生活を送っている。夕食に御馳走を食すのは当たり前と思っていたが、そうではない。

「夕食後は寝るだけなので、300キロカロリー程度でいい。昼食はタンパク質、脂肪の多いものを摂り、だいたい600キロカロリーが目安です。毎日運動を続けると、リズムが取れます。運動として私は体育をお勧めします。体育とは自転車に乗る。泳ぐ。ジョギングをする。ハイキングをする。他人と競争するのではない体育です。例えば、階段を歩いて上るなど、こまめに体を動かすことがとても大切なのです」

同時に、取り入れたいのが呼吸法である。

「禅では呼吸法を『調息の法』と言います。体が調ったら、鼻から少しずつ肺一杯に吸い込み、そのまま14~15秒保ちます。そして、それを鼻から細く長く吐き出すのです。それを4、5回行う。加齢とともに、自律神経の副交感神経が衰えます。息を吐き出す時は副交感神経を刺激するので、副交感神経の回復にも役立つと思います」(田村氏)

田村氏は現在86歳。生体リズム健康法を実践して、すでに長寿の域にある。

「人は自然の太陽の恵みの中で、心と体の調和を取りながら暮らしています。この調和の乱れが病気を招くのです。平たく言えば、不摂生が悪い。病気を予防し、治すにはこの調和を保ち、乱れた調和をただすのが基本です。自然の中で健康を増進し、保持、回復させる健康法が生体リズム健康法と言えます。1日をいかに科学的根拠のある暮らし方ですごしたらいいか、私の話をヒントにして考えてみて下さい」

田村氏の目標も100歳まで生きることだという。

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