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『エゾメバル』北海道斜里町/ウトロ漁港産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

「夏枯れ」という言葉がありまして、主に北海道の海釣りでよく使われます。

まあ、単純に読んで字の如しといいますか、北海道においては高水温期となる夏の時期に魚が釣れにくくなるということで、ここ数年はさらに海水温が高くなるせいか、秋の始め頃まで芳しくないことがあるようです。

一般的には水温の高い時期は魚の活性も高く、何やかんやと賑やかに釣れるイメージなのですが、寒さに慣れた北海道の海水魚たちにとって、暑さは苦手ということなのでしょうか。人間も、南国の方は寒さが苦手、北国の方は暑さが苦手なんて話も耳にしますので、魚たちも同じような感覚なのでしょうか。もちろん、魚の種類によっては当てはまらないこともあり、全く何も釣れない訳ではありません…。

さて、苦手なゴキブリから逃がれるべく北海道は知床に来ておりまして、前回は川釣りを楽しみました。せっかくの知床ですし、海沿いの国道334号線を走れば雄大な海岸線が目に入りますから、海釣りも楽しみたいところです。「どこかよさげな場所はないものか」と車を走らせるうちに、観光地としても人気のウトロの町中に入り、よい雰囲気の漁港が見えてまいりました。「足場もよさそうだし(ここ大事)、何かしら釣れるだろう」と駐車場に車を停めて堤防へと向かいます。

平日とあって堤防上に釣り人の姿はなく、いかにも釣れそうな先端部からカレイを狙ってみることにします。広々とした堤防先端から、思い切り仕掛けを投げるのはそれだけでも実に爽快なもので、凪の海の遥か沖にポチャンと着水を確認したら、あとは竿を置いてアタリを待つばかりです。雄大な知床の海岸を眺めつつ、「この雰囲気ならすぐにでもアタリが出るのでは?」とワクワクしながら竿先を眺めて待ちます。

意外な苦戦に作戦変更!

ところが、期待とは裏腹に一向に竿先に反応がありません。しばらく待ってからエサを点検するべく仕掛けを巻き上げてみると、エサを取られた形跡は全くナシ。それでも「そのうち釣れるでしょう」とエサを付け替えてアタリを待ちますが、一向に状況は変わらず。時間を置いて回収した仕掛けには、エサが付いたままの状態で戻ってきます。どうやら夏枯れというヤツのようですな。

こんな時は目先を変えて、違う釣り方で違うターゲットを狙うのも一つの手です。投げ入れた投竿はそのままに、あらためて安物のセット竿を取り出し、市販の胴突き仕掛けにエサを付けて、堤防の際に仕掛けを落としてみます。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

澄んでよく見える海底には基礎石が沈み、生い茂る海草には何かしらが潜んでいそうな雰囲気…。と、すぐにキュキュンッ! と竿先が絞り込まれ15センチほどのエゾメバルが釣れ上がりました。食べるには忍びない大きさゆえに逃がしはしたものの、アタリがあるのは楽しいものです。

この1尾に気をよくして、エサを付け替え仕掛けを落とします。と、再び着底と同時にガクガクッと竿が震え、柔らかい安物竿をほどよく曲げて上がってきたのは、またしてもエゾメバル。今度は20センチほどの食べ頃サイズです。

エゾメバル
エゾメバル (C)週刊実話Web

その後も、時に小型のカジカとのダブルも混じりながら、仕掛けを落とせばすぐに釣れるほどの釣れっぷり。さすが「ガヤガヤとうるさいほど群れでいる」ことから、ガヤとも呼ばれるエゾメバル。入れ食いです。

ヘチを探ってお土産を確保

釣れなければ飽きるし、釣れすぎても飽きる。ワタクシも勝手なものですね。仕掛けを入れれば、すぐに釣れる状況がしばらく続くうちに「もう十分」となり、大きめの物を3尾、クーラーボックスにしまって竿を畳むことにしました。

最後に放置していた投竿を「カレイでも付いていないかな」と密かに期待して上げましたが、こちらはスカ。魚によって、こうも釣れっぷりが違うのもまた面白いものですな。

さてこのエゾメバル、生息域が北海道や東北北部と限られるため、全国的な知名度がそこまである魚ではありません。とはいえ、食味はメバルと遜色なし。ということで、メバルの定番料理でもある煮付けで晩酌です。ホロホロと身離れのよい白身は、上品で白身魚らしい旨味をしっかりと感じつつ、ワンカップの〝流氷浪漫〟をチビチビとやります。

エゾメバル煮付け
エゾメバル煮付け (C)週刊実話Web

この手の魚は頭が大きいので、食べ始めると意外にアッという間に食べてしまうもので、頭や頬などもほじくりつつ、ほどなく完食。あれだけ釣れたのだから、もうちょっと持って帰ってきてもよかったなぁ、などとちょっと後悔はしたものの、夏枯れの状況でも楽しい釣りができた知床の海に感謝をしつつ晩酌を終えたのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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