東京・両国国技館で開催されている大相撲秋場所が低調だ。
場所前にスポーツ紙を広げても、どこに関連の記事が載っているのか探すのに一苦労するぐらいだったから、盛り上がらないのも仕方がない。
そんな秋風が身にしみる場所を象徴するのが、先場所の覇者、横綱・白鵬の休場である。
所属する宮城野部屋にコロナ感染者が出たため、とばっちりで休場を強いられたものだが、もともとヒザの状態が思わしくなく、本人は内心、しめしめとでも思っているのかもしれない。これで来場所は、休養十分で出場できるからだ。
ただ、周囲は落胆している。とりわけ幕内上位に昇進し、白鵬との初対決を楽しみにしていた豊昇龍(元横綱・朝青龍の甥)や、琴ノ若(元横綱・琴櫻の孫)らはずいぶん残念がっていた。豊昇龍は「一番やりたかった人です。今場所、やっとやれると思って楽しみにしていたのに」と嘆いた。
豊昇龍の師匠、立浪親方(元小結・旭豊)は言う。
「白鵬とやる機会はもうそんなに多くはない。だから、チャンスをもらったら大事にしてほしい」
若手にとって白鵬の休場は、単なる1回パスでは済まないのだ。
照ノ富士との“横綱対決”もお預け…
新横綱の照ノ富士も、肩透かしを食らった1人。先場所千秋楽、反則まがいのひじ打ちや張り手を食らわされ、まんまと優勝をさらわれた悔しさは、今でも胸に渦巻いている。
やられたらやり返す――。そんな思いが横綱昇進会見での「土俵の上でも下でも、みんなに存在感を示し、尊敬される横綱になりたい」という言葉や、横綱昇進のときの「横綱の品格、力量の向上に努めます」という口上に詰まっていた。
しかし、残念ながら注目の横綱対決もお預け。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は、こう慰めた。
「いろんな思いがあるだろうけど、頑張らなくてはいけない。横綱なんだから」
力士たち以上に、「やられるところを見たかった」というファンの失望も大きい。白鵬はなかなか罪作りな横綱だ。
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