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『アメマス』北海道斜里町/オチカバケ川産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

《楽しかった渓流釣り 40年2組 三橋雅彦》

ぼくはゴキブリが大の苦手です。夏から秋にかけて、遭遇率が上がるので怖いです。この前も池袋のビジネスホテルで部屋に入って寝転がったら、天井近くの壁に黒くて大きいゴキブリがいて卒倒しかけました。とても怖かったので、着の身着のまま、裸足で逃げ出してしまい、フロントのお姉さんにお願いして荷物と靴を取りに部屋まで一緒に行きました。

黒くて大きいのはチ○ポコだけで十分です。お小遣いが少ないぼくは、いつも安い所に泊まるので、今の季節はこういうことがたまにあるのです。

どうすればゴキブリに会わなくて済むか、ぼくは考えに考えた末、北海道の知床へ釣りに行くことにしました。知床まで行けばゴキブリはまずいないので安心です。今回はゴキブリから逃げることが目的なので、特に細かく釣り場は決めていません。斜里からウトロに向けて国道334号線をのんびり走りながら、適当な場所で釣りをしようと思います。とはいっても遠音別川、奥蘂別川、止別川では全ての水産動物の採捕が禁止されているので注意です。

のんびりと走るうちに、小さいながらも開けた雰囲気のオチカバケ川にさしかかり、堪え性のないぼくは早く竿を出したかったこともあって、ここでやることにしました。なぜここにしたのかというと、それは川に降りやすいことと、河原が開けているからです。

熊を警戒して友の名を叫ぶ

渓流釣りといっても、ぼくは山登りや沢登りができないので、できれば作業着と運動靴で手軽にやりたいのです。あと、知床はヒグマとの遭遇率が高いので、山深いところは怖いです。ゴキブリも怖いですがヒグマも同じくらいに怖いです。そして、こちらから積極的に気配を出して急な遭遇を避けることが重要という点でも、ゴキブリとヒグマは似ているなぁと思いました。あと、どちらも黒くて大きいくせに、なにかと敏感なのはチ○ポコにも似ているなぁと思いました。

車から降りて、念のために「熊さん熊さん来ないでね! ホホホイホホホイホホホイホ~イ!」と踊って叫びながら、誰もいない河原に降り立ちます。安物竿に簡単な仕掛けとエサのミミズを付けて流すと、すぐにブルルッとヤマメが釣れました。でも小さいので逃がしてあげました。これならぼくでもそのうち大きいのが釣れるかも、と嬉しくなりました。でも、浅く小さな流れのせいか、その後はアタリがありません。

オチカバケ川
オチカバケ川(C)週刊実話Web

仕方がないので、大きな声で叫びながら上流に向かうことにします。ですが、「独り言を叫ぶ怪しいヤツ」と思われるのも嫌だなぁ…。そこで、ぼくはいいことを思いつきました。友達を呼んでいるフリをすればいいのです。大きな声で「たけしぃ~! ようすけ~! ともひろ~!」と友達の名前を叫びながら釣り上がると、いかにも魚が潜んでいそうな堰の落ち込みが見えてきました。

発泡酒“知床ドラフト”をやりながら…

「あそこは間違いねぇ…」ドキドキしながら、姿勢を低くして近づきます。念のため「たけしぃ~!」と叫びながら仕掛けを流すと、グリッ、グリグリッ! と、すぐに反応がありました。反射的に竿を煽るとギュギューンッと鋭い手応えが伝わります。さっき釣れたヤマメより力強いヒキなのでぼくはドキドキしてしまいました。

ひとしきり暴れさせてから寄せると、バチャバチャと水面に魚体が見え、丁寧に抜き上げて無事手にしたのは水玉模様が鮮やかな、25センチくらいのアメマスでした。アメマスは北の魚なので北海道に多いです。ヤマメではありませんが、むしろ北海道らしい獲物なのでぼくはとても嬉しくなってしまいました。

アメマス
アメマス (C)週刊実話Web

お家に帰ってからはアメマスをバター焼きにして晩酌です。アメマスはもともと食味評価の高い魚ではなく、脂乗りが薄い肉質は旨味も少なく淡白です。食感もヤマメのようにフワフワではなく、硬めでちょっとパサついています。

アメマスバター焼き
アメマスバター焼き(C)週刊実話Web

でも、いいんです。釣れた時のことや景色を思い出しながら一杯やる時間も大好きなのです。香りが楽しめるという発泡酒〝知床ドラフト〟をやりながら、澄んだ水面に躍り出たアメマスの斑点模様を思い浮かべて、気持ちよく晩酌を楽しむことができました。

今回は開けたお手軽渓流でしたが、せっかくの知床なので、次は熊に気をつけて、作業着と運動靴で可能な限り、山奥の沢にも行ってみたいです。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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