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工藤会(五代目工藤會)野村悟総裁に衝撃の死刑判決!“国策捜査”といわれた闘い…

工藤會・野村悟総裁(右)と田上文雄会長 (C)週刊実話 無断転載禁止

五代目工藤會(福岡)・野村悟総裁に、指定暴力団トップとして史上初の死刑判決が下された。野村総裁と田上文雄会長は、元漁協組合長射殺事件(平成10年)、福岡県警の元警部銃撃事件(同24年)、看護師刺傷事件(同25年)、歯科医師刺傷事件(同26年)の4件で、殺人と組織犯罪処罰法違反(殺人未遂)などの罪に問われ、検察側は野村総裁に死刑、田上会長に無期懲役と罰金1200万円を求刑。

判決当日の8月24日、福岡地裁周辺は緊張に包まれていた。工藤會は我が国で唯一の危険指定暴力団であり、警察当局が厳戒態勢を敷いていたからだ。

それは野村総裁が勾留されている福岡拘置所でも同様で、地裁へと向かう野村総裁が乗った車両には、前後に警備車両が張り付いた。拘置所の出入り口から離れた路上では、黒いスーツに身を包んだ組員らが整列。通り過ぎる車両に向かって、一斉に頭を下げる姿があった。

「工藤會は2人の逮捕から約7年もの間、トップが現場不在となっているが、組員たちは復帰を信じて、待ち続けているのだろう」(九州の組織関係者)

そうした思いを阻むかのように、整列する組員らの至近距離には福岡県警の警察官の一群があり、野村総裁を乗せた車両が通り過ぎるまで警戒を続けた。

福岡地裁での傍聴は抽選となり、わずか23席を巡って275人もの傍聴希望者が並んだ。厳重な手荷物検査とボディーチェックが行われ、午前10時、ついに開廷したのである。

法廷内に入った野村総裁と田上会長はいずれもダークスーツ姿で、裁判長と弁護団に向けてそれぞれ一礼したのち、親族がいる傍聴席に向けては笑顔を見せた。

開廷を告げた足立勉裁判長の第一声に、誰もが耳を傾けた。本来ならば「主文、被告人を○○に処する」と冒頭で判決が言い渡されるのだが、足立裁判長が主文を読み上げず後回しにした瞬間、傍聴席にいた報道記者らが一斉に立ち上がり、法廷を飛び出した。死刑判決が出される可能性が高くなったからだ。

「重大事件の裁判では、死刑判決を受けた被告人が動揺し、その後の事実認定の読み上げなどに支障をきたすと考えられ、刑の言い渡しを最後にする場合があります。今回も、それが想定されたためでした」(全国紙社会部記者)

福岡地裁は、まず4事件すべてに関して2人の共謀を認定。ここから、長時間にわたる事実認定などの読み上げが始まった。

背景にあった工藤會の「壊滅作戦」

「野村総裁の場合、量刑判断の中心は元組合長射殺でした。実行犯2人が元組合長に至近距離から銃弾5発を発射した事件で、利権に絡んだ要求を拒まれたことを動機として、野村総裁を首謀者と位置付けました」(傍聴したフリー記者)

野村総裁の意思決定による組織的な犯行とし、事件前後の工藤會内の動向についても以下の点に言及した。

〇犯行に使用された車両の調達に、当時、野村総裁がトップで田上会長がナンバー2だった田中組の幹部らが関与している

〇実行犯のアリバイに関する口裏合わせを工藤會幹部が関係者に依頼

〇犯行に関与した組員らに対し、工藤會が現金を積み立て、多額の差し入れなどをしている

元警部銃撃、看護師刺傷、射殺された元組合長の孫にあたる歯科医師の刺傷に関しても、福岡地裁は「被告人が意思決定したものと推認される」とした。

「田上会長に関しては、元漁協組合長を射殺した実行犯に無期懲役判決が出ていること、他3事件でも野村総裁に次いで責任の重い立場にあったことなどを量刑の理由としました」(前出・フリー記者)

4事件の事実認定、量刑の理由が読み終わったのは、開廷から実に6時間後のことだった。休廷を挟みながらも長時間に及んだが、2人は疲労を見せることなく判決の時を迎えた。

野村総裁に死刑、田上会長に無期懲役が告げられ、再び報道記者らが慌ただしく法廷から駆け出した。当の2人は無表情のまま証言台をあとにしたが、閉廷後、足立裁判長に向かって〝抗議〟したのだ。

「生涯、後悔するぞ」

野村総裁のその言葉を聞いた田上会長も、「ひどいな、あんた…足立さん」と言葉を続けた。

「工藤會トップという立場からではなく、公平な審理を願っていたにもかかわらず、こうした判決を下した裁判長に対し、心底、落胆したのでしょう。1年5カ月にわたる公判では、約90人もの証人も出廷しましたが、直接的な証言や証拠は一切なかったのですから」(前出・フリー記者)

作家でジャーナリストの宮崎学氏は、今回の判決についてこう話す。

「弁護団の団長は、ボディーガードの組員による拳銃所持の共謀共同正犯に問われた山口組・瀧澤孝元顧問の裁判で争い、最期まで有罪にさせなかった後藤貞人弁護士だった。それに加えて、過去に工藤會関係者の無罪判決を勝ち取った岡田基志弁護士など精鋭揃いといえ、弁護には絶対の自信を持っていたはず。それにもかかわらず、死刑判決が言い渡されたのは、はじめから『死刑ありき』の裁判だったためだ」

〝国策捜査〟といわれた工藤會の「壊滅作戦」が、背景にあったという。

山口組にも衝撃が…

「もともとアメリカ政府から、『日本はヤクザを野放しにしている』との批判を受け、警察庁が乗り出した。予想していた判決ではあったが、関係者たちは死刑判決に衝撃を受け、『ヤクザ罪にも程がある』『推認で死刑などあり得るのか』といった疑問の声が上がっている。検察の主張は厳密な証拠に基づいておらず、今日の判決公判の読み上げでも、福岡地裁は『推認される』という言葉を重ねていた。日本の捜査のあり方に疑問を抱かざるを得ない」(同)

当の野村総裁については、判決後の様子は意外なものだった。

「関係者によると、別段気落ちした様子もなく『俺の心配はしなくて良い。無実やけ、頑張って闘う。それよりもお前らは大丈夫なんか?』と、面会した組員を気遣っていたと聞く。心中は察するに余りあるが、立ち止まることなく、すでに控訴審に向けて備えているようだ。控訴審の論点は、推認で死刑という〝禁じ手〟をどう崩すか。しかし、もはや裁判の体をなしていないといえ、苦戦を強いられるだろう」(同)

判決直前の8月20日には、工藤會と親戚関係にある住吉会(東京)の関功代表、小川修司会長、小坂聡会長代行が野村総裁と面会。また、接見禁止が解けた昨年10月には、六代目山口組(司忍組長)の髙山清司若頭も野村総裁のもとを訪れていた。

「生々しい話などせず、世間話に終始していたと聞く。それでも、拘禁生活の長い野村総裁を激励するための面会だったことは、言うまでもない」(他団体幹部)

しかし、判決公判当日の裁判長に向けた発言が影響し、野村総裁、田上会長共に再び接見禁止となった。

今回の判決は、他団体のヤクザたちにとっても、決して他人事ではないという。

「トップの逮捕、起訴の段階ですら驚いたのに、裁判で〝暴力団の行動原理〟を根拠にされたら、もはや証拠も何も関係なくなってくるわな。世間に迷惑を掛ける気はさらさらないが、こんなムチャが通るんやったら、明日は我が身やで…」(関西の組織関係者)

逮捕から7年、警察当局にとって〝悲願〟といえる死刑判決は、今後、分裂抗争の渦中にある六代目山口組など、他組織の動向にも影響を与えそうだ。

「戦う相手を見て、これまで以上に慎重に行動するしかない」(他団体関係者)

指定暴力団トップに下された史上初の判決に、ヤクザ業界は揺れ続けている。

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