エンタメ

小舟で遭難…死を覚悟したTVロケ~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web 

先週からの続きです。僕が死を覚悟したロケ、『世界ウルルン滞在記』(MBS/TBS系)のスリランカでのカツオ漁。1995年、「スリランカでかつお節を作る村がある」と聞きつけた我々ロケチームは現地に飛び、過程をキャメラに収めようとしますが、うまくいきません。3人で立ち乗りする小さな舟で何度も沖に出るものの、海や天候が荒れて漁場までたどり着けないのです。そうしているうち、明日が帰国というタイムリミットが訪れました。

ラストチャンスの日、天気は朝から快晴です。沖を見渡すと、カツオが飛び跳ねている姿が確認できました。「これは縁起がいいぞ」と、漁場に向かいます。ところが案の定、途中で降ってくる雨。我々にとってはラストチャンスですが、行くか引き返すか、その判断は舟の最後尾にいる長老にかかっています。長老は「行くぞ」と言いました。「おっ、行くんだ」と思ったのもつかの間、天気は暴風雨に。波は高く、木の葉のように小さな僕らの舟は大揺れ。

ポンチョのようなものを着ていましたが、その程度じゃ守れないくらい、打ちつけてくる強い雨。視界は1メートルくらいしかありません。しゃがもうと思いましたが、普段ならそうすると長老に突っつかれて「立て」と言われていたので、振り向いて様子をみると、長老はうずくまっています。「これは、やばいかもしれない…」そう思った矢先、僕らの舟と、スタッフが乗っていたエンジンつきボートをつないでいたロープが、ぷつりと切れてしまいました。

遠くで聞こえる「原田くーん!」の声…

大波で舟は激しく上下していましたから、「普通のロープがもつわけないよな」なんて冷静になる僕。この先に待ち受けているのは、遭難です。スタッフのボートに引っ張られて2時間かけて沖まで出て、今の視界は約1メートル。うちの舟にはオールもエンジンもない。つまり、自走能力がありません。遠くで聞こえる「原田くーん!」というスタッフの声。その声もやがて、聞こえなくなりました。

これは海の藻くずになる――そう覚悟しました。この状態で、助かるすべは何もない。「俺の人生、25年で終わりか。しかも幕引きはスリランカかい!」なんて頭をよぎります。その瞬間、記憶の最後のページをいさぎよく閉じました。「どうしてくれるんだ」と言ってもどうにもならないし、「助けてくれ!」と言ったところで助かりようもない。「人生は以上だ」とすべてを閉じ、そこから記憶がありません。

どれくらい経ったのかわかりませんが、結論から言うと僕らは、ある漁港に漂着しました。空を見ると、雨はやんでいます。そこにスタッフの乗ったボートが到着、なんとか助かりました。落ち着くと長老に「こんなしけは人生で初めてだ。お前が悪いんだ」と言われましたが、僕が同行していきなりこれだけの大しけに当たったのなら、そう思うのも当たり前か、なんて思ったものです(笑)。

原田龍二
1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

あわせて読みたい