社会

コロナ感染爆発、台風直撃、巨大地震…9月「トリプル災害」の地獄絵図

(画像) Goami / shutterstock

「1日2万人を超える新型コロナの新規感染者が発生し、収束の見通しが全く立たないのは、東京オリンピック開幕と関係あるのは明らかです。

感染防止は人に会わないこと。それに尽きる。しかし、それを若い人に言っても、なかなか難しい。政府はいったい、どうするんですかねえ」

こうボヤくのは「時間医学」の第一人者として知られる山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏である。

東京五輪が閉幕(8月8日)してからも、新規感染者数拡大に歯止めが利かない。13日には東京都で5773人の新規感染者が確認されるなど、16都府県で過去最多を記録、全国で初めて2万人を突破した。18日には新たに大阪で2000人、愛知・兵庫・福岡で1000人を超えた。国内の重症患者も1800人台と高い水準が続いている。

公衆衛生が専門の医師で作家の外岡立人氏が解説する。

「オリンピックによって人流を活発化され、それがウイルスの活発化につながることを政府は認識していなかったのでしょうか。いずれ新規感染者数は現在の3倍になると思います。第5波発生から6週間が経過しているが、現時点ではピークに達したとは判断できない。しかし、この第5波の特徴は、死者数が少ない傾向にあることです。通常、ピークをすぎてから死者の発生数は増えていく。これからどういうことになるか分からないが、現段階では第5波の死者数全体は減る見込みです」

感染爆発で医療体制はひっ迫し、現場が危機的状況に陥っている折、菅義偉首相は17日の記者会見でこんな対策を打ち出した。

「国民の命を守る、これが政府最大の責務であります。例えば、酸素の投与が必要になった場合、酸素ステーションを設置して対処する。そうした体制を、これから速やかに構築するように関係大臣に指示しました」

この酸素ステーションを考案した神奈川県の医療危機対策統括官・阿南英明氏は、メディアに対してこう語っている。

未曽有の大災害に対峙する無能な政治家

「やらなかったら1時間後に死ぬという人たちに酸素を投与することで、半日、1日、命がつながる。そして、病院につながっていくわけです。あくまでも、その人の病床が確保されるまでの時間稼ぎ。最終的なゴールというのは、やはり病床の拡大です」

病床の新設でいえば、中国・武漢で新型コロナが蔓延した際、ベッド数1000床の専門病院を10日間で整備したことが記憶に新しい。酸素ステーションの有効性については、「本格的な治療の前に酸素不足を補う。一時的な対処法としては意味があるでしょう。しかし、どこまで効果があるかは分かりません」(前出・外岡氏)と未知数だ。

「これまでは軽症者や無症状者が自宅または宿泊療養、中等症以上が原則入院でした。しかし、中等症を2段階に分類し入院基準を厳格にした。限られた病床を効率的に使うことができるが、入院できない自宅療養者の容体が急変した場合、迅速に対応できず死亡するケースが増えている」(サイエンスライター)

新型コロナの死亡者は、すでに1万5000人を超えている。東京都の専門家は「災害レベルの非常事態」と危機感をあらわにしているほど。同時に8月に入ってから九州、中国地方を中心に豪雨が襲い、山間部では土砂崩れ等の被害が続発している。

「何もかも異常です。50年に一度という豪雨が降り続き、新型コロナが蔓延する。おまけに、政治家はリーダーシップを執って何事かを成し遂げるということができていない。まさしく地獄ですよ」(防災ジャーナリスト・渡辺実氏)

西日本では活発な前線の影響で局地的に雨雲が発達し、「線状降水帯」によって、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いた。線状降水帯とは、積乱雲が線状に次々に発生、ほぼ同じ場所を通過、停滞することで作り出される強い雨のエリアだ。

国家とはどういう存在なのか…

「これから本格的な台風の季節を迎えます。例えば、マーシャル諸島周辺での熱帯低気圧は台風に変わり、西進する。台風が前線を刺激して、再び大雨を降らせる恐れもある。非常に心配ですね」(気象予報士)

熱帯低気圧の存在する海域は、海面水温が台風発達の目安となる27度よりも高い海域。従って、台風発生後も発達し、強い勢力を維持したまま日本に上陸することが多い。例年、9~10月には北上、西進する台風が日本列島を直撃する。

「線状降水帯による豪雨と台風。自然災害は毎年続き、温暖化によって規模も大きくなるばかりです。そのうえ、新型コロナという感染症が蔓延し、我々の生命を脅かす。コロナ感染し中等症になっても自宅で療養しなければならない。オリンピックを実施して感染拡大を招いた。我々にとって、国家とはどういう存在なのかということを考えなければならない時が、来ているんじゃないかと思います」(前出・渡辺氏)

懸念される災害はコロナや豪雨・台風だけではない。8月14日午前8時29分(現地時間)、カリブ海・ハイチ西部でM7.2、最大震度7の巨大地震が発生した。石造りの家屋は倒壊し、現在のところ死者は2000人を超えたと見られており、懸命な捜索、救助活動が続けられている。

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏の話。

「カリブ海一帯の島々は火山島が多く、ハイチもその1つ。大西洋プレートが潜り込んでいるところなので、火山、地震が多いのです。その点では太平洋プレートが潜り込んでいる日本と似ている。11年前、同地では31万人の死者を出した巨大地震が発生しています」

「市民の多くは半壊した住宅やテントでの避難生活を余儀なくされている。そのうえ、カリブ海で発生した熱帯低気圧『グレース』の襲来が予想され、被害が拡大する恐れがある」(全国紙外信部記者)

経済被害は約95兆3000億円!

日本にとっても対岸の火事ではない。「地震多発の時代」を迎え、来るべき首都直下大地震のXデーが迫っているのだ。

「フィリピン海プレートが活性化しています。最近、起こる太平洋側の地震はそのせいです。いつということは言えないのですが、首都直下地震は刻々と近づいています」(前出・島村氏)

M7クラスの首都直下地震が起きた場合、首都圏の死者は最悪で約2万3000人、経済被害は約95兆3000億円に及ぶと、国は想定している。

不気味な点はまだある。気象庁は南硫黄島の近くにある海底火山「福徳岡ノ場」で8月13日から大規模な噴火が始まったことを発表。現在も依然として活発な噴火活動が続き、直径約1キロの馬蹄形の新島が確認されている。

「福徳岡ノ場では今後も活発な噴火活動が継続する可能性が高いので、福徳岡ノ場の周辺海域では噴火に伴う弾道を描いて飛散する火山弾やベースサージに警戒が必要です。とりわけ、ベースサージは火山ガスと火山灰などの混合物が、水面や地表面を高速で横方向に広がる現象です。地表のものを巻き込むなどして、人体や建物、船舶などに大きな被害を与えます」(前出・サイエンスライター)

35年前(1986年1月)の噴火では長径600メートル、高さ15メートルの新島が生まれたが、噴火終了後の海食によって消滅している。

「福徳岡ノ場が大噴火したことは西之島が成長したことと同様、大きな意味を持つと思います。9月21日には大地震との因果関係が指摘されるフルムーン(中秋の名月)もあり、日本列島に大きな地震が発生するかもしれない」(同)

コロナに豪雨に巨大地震のトリプル災害が急襲すれば、たまったものではない。

「日本沈没と同じ状況が生まれる。日本は当分、立ち直れませんよ」(前出・渡辺氏)

最悪な事態が起きないことを望む。

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