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蝶野正洋『黒の履歴書』~DaiGo差別発言の本質

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

メンタリスト・DaiGoくんの発言が波紋を呼んでいる。

自身のYouTubeチャンネルでライブ配信中に「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃない」と切り出し、「自分にとって必要がない命は軽い」「ホームレスの命はどうでもいい」などと暴言を連発。ネットを中心に炎上する騒ぎになり、謝罪に追い込まれることとなった。

人の命を軽く見たこの発言は許されるものではないし、根本的に間違っている。でも、これが彼の本音なんだろうってことも伝わってくる。彼が普段から思っていた考えが、ネット配信とはいえ、公的な場で言ってしまったことが問題になったんだろうね。DaiGoくんは謝罪したけど、今の時点で根っこの考え方までは変わってないと思う。

ホームレスの方々に対するヘイト発言は言語道断だけど、彼の主張の本質は自分が納めた多くの税金が困窮者への福祉、生活保護に使われていることに納得できないことなんだよ。

これは単純に勉強不足。彼のように若くしてお金をもうけた人がハマりやすい考えなのかもしれない。そもそも、学校で税金のことをちゃんと教えてないのがよくないんじゃないかな。

社会に出るまで俺も税金の知識なんてなかったし、社会人になって自分で納めるようになってから「こんなに取られるんだ」って気づいた。

プロレスラーの中には、入ってきたギャラを全部使っちゃって、翌年に「税金を払ってください」と言われて慌てる選手もいた。そういうのって、会社は教えてくれないから、自分で会計士をつけて税金の納め方から学んでいくしかないんだよね。

「プロレスラーは稼げる」と思って入った

余談だけど、昔は「長者番付」というのがあって、高額納税者の名前が公示されていた。(アントニオ)猪木さんはそのリストの常連で、スポーツ選手部門で1位になった年もある。あとから聞いた話では、猪木さんは自分のギャラだけじゃなく、関連会社の収入も全部くっつけて、税金をより多く払うようにして長者番付に載っていたらしい。

他のスポーツ選手よりも、プロレスラーは稼げるってことをアピールしたかったんだろうね。実際、長者番付を見て「プロレスラーは稼げるんだな」と思って入ったのが俺だ(笑)。すっかり騙されたよ。

とにかく、税金とその使い方に関しては、若い世代にこそちゃんと教えないといけない。でも、今の政治は金の流れを隠すことが多いから、より不審に思われてしまう。

東京オリンピックもそうだったけど、予算がこれだけありますと発表して、終わってから赤字でしたと騒ぐが、肝心の金がどこの何にどれだけ使われたのかが分からない。あれを見てたら、「税金を払いたくない」という気持ちも分かる。

特に今の若者は、不景気しか知らない世代。バブルの頃の大人たちの負の遺産を背負わされてると感じているし、給料も安い。そこから取り立てた税金が不透明な使い方をされたら、文句の一つも言いたくなるよ。

だから、DaiGoくん一人を追い詰めたところで意味がない。若者に社会福祉と税金のシステムをしっかりと説明して、納得してもらうしかない。

今回の炎上は、みんなで社会保障と税金について考える、いいきっかけになったんじゃないか。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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