もはや制御不能。世界中が未知のウイルスに翻弄されているが、相撲界も例外ではない。9月12日に東京・両国国技館で始まる秋場所に向け、8月23日から4日間、合同稽古が行われたが、それ以外の出稽古は全面禁止。観客も上限5000人を予定している。
「これから(コロナが)どうなるか。それによっては変わってくる」
芝田山広報部長(元横綱・大乃国)も、言葉を濁すしかない。
ファンもそうだが、力士たちもこの1年半、コロナに振り回されっぱなし。そんな中で最も泣かされたのが、8月30日に発表される秋場所の番付で大関から陥落する朝乃山だ。
不要不急の外出禁止だった6月に、キャバクラ通いをした上に嘘までついて、6場所の出場停止と50%の減給6カ月という厳罰を食らった。
毎日、ただ稽古するだけで、部屋にこもっている朝乃山の鬱々とした気持ちは想像に余りあるが、7月末には師匠の高砂親方(元関脇・朝赤龍)らとともに、恨み骨髄のコロナに感染してしまった。泣きっ面に蜂とは、まさにこのことだろう。
新横綱昇進の照ノ富士は…
大損したのは新横綱の照ノ富士も同じ。横綱昇進は相撲界最大の慶事。応援しているタニマチたちにとっても、ご祝儀のはずみどころだ。
ところが、そんなタニマチ巡りをしたくても、外出禁止のため出向くことはできない。時節柄、昇進披露パーティーも開けない。
「照ノ富士は大関再昇進したときも、パーティーを開けずじまい。もらい損になったご祝儀は1000万や2000万じゃ、きかないでしょう」(協会関係者)
この2年以内に引退した豪栄道や琴奨菊ら、10人もの親方たちも悲惨を極めている。本来なら特権として引退相撲を開き、数千万円の収入を得ることができる。ところが、いまだ引退相撲が開けないのだ。そんな訳で現在も、ちょんまげ姿のまま館内をウロウロ。
相撲界にも恨み節が渦巻いている。