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『アナザーラウンド』/9月3日(金)より全国公開〜やくみつる☆シネマ小言主義

Ⓒ2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

『アナザーラウンド』
監督/トマス・ヴィンターベア
出演/マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネヴィー
配給/クロックワークス

何と言っても着想が面白い。ノルウェー人哲学者の「人間は血中アルコール濃度を0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」という仮説を証明しようと、公私ともにパッとしない中年高校教師とその同僚3人が実験を試みるという物語。この着眼点だけで、もう成功したようなもの。

さらに製作意図とは異なると思うのですが、本作が日本で公開されるのは、コロナ禍で飲酒の機会も場所も制限されまくっている9月3日。アルコールが入ると、気が緩んで大声を出してしまうという「飲み方」の問題が、コロナ感染源と繋げられて槍玉に挙がっている日本においては、もはや禁断の飲酒映画。ある意味、非常にタイムリーです。それでなくても日本では、「酒を飲まなくても平気な人」と「酒飲まずにはいられない人」との分断が起きている気がしていました。

自分はというと、既往症でドクターストップがかかって以来、飲まなくても全然大丈夫な部類。何より大声で騒ぐ酔っ払いは苦手ですが、「飲む」VS「飲まない」で分断されてしまった今、飲酒はどこまでなら有用なのかを検証するこんな映画を見たら、「飲まないで平気派」の自分でさえ試みたくもなります。

外での飲酒が妙に羨ましい…

そして、この中年4人組は、仕事中にもこっそり酒を飲んで常にホロ酔い状態をキープし、その結果を論文に仕立てるべくきちんと記録します。その姿はまるで、大真面目にくだらない研究をするイグノーベル賞狙いの人たちのようです。

彼らの想像以上に飲酒効果が表れ、生徒にも親にも不人気だった授業が様変わりして盛り上がり、会話のなかった家族ともうまくいく。さらに面白かったのが、映画途中に挟まった過去の大政治家たちの映像。どう見ても酒を飲んでるとしか思えない、赤ら顔でヘラヘラしながら会見をしているチャーチルやブレジネフ、クリントンらをまとめて見せられると、何とも人間くさくて秀逸でした。日本での酩酊会見といえば中川昭一元財務相。ちょっと格下感はありますが、なぜ日本代表として入れてくれなかったかなぁ。

と、そこまではよかったのですが、次第に飲酒量が制御不能になって全員グダグダに。これもあるあるです。

なお、パンフレットの解説を見るとワイン1、2杯で到達する「血中アルコール濃度0.05%」は、日本の道交法では免停レベルだそうなので要注意です。

常に酔っ払って多幸感に浸るのはアル中の入り口とは分かっているものの、外で人と飲食を共にすることが御法度な今、妙に羨ましさが募る映画でした。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。

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