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人生これで終わりだと思った瞬間~原田龍二の『不思議な世界』

原田龍二
原田龍二 (C)週刊実話Web

人生で何度か死にそうになったことはありますが、「俺の人生、ここで終わりだな」と完全に諦めたことがあります。1995年のスリランカでのことでした。

僕にとって初めての、『世界ウルルン滞在記』(MBS/TBS系)のロケ。スリランカの最南端の村ではカツオ漁が盛んで、かつお節を作っているとのこと。現地の人は、かつお節をカレーにまぶして食べているというのです。日本でしか作られていないものだと思っていたかつお節が遠く離れたスリランカで、カツオの一本釣りをして作られているとは驚きです。その工程を番組でお届けしようということになり、僕らロケチームはスリランカへと飛びました。

『ウルルン滞在記』はクイズ番組ですから、現地の人たちが行くカツオ釣りに僕も同行して、問題を出さなければなりません。「同行させてもらえますか?」と釣りに行く方へお願いしたところ、彼らは「撮影の前にお前をカツオ釣りへ連れて行き、耐えられるかチェックする」と言いました。

連れて行かれた先にあったのは、木彫りの舟。乗る場所の幅は、僕の両太ももプラス10センチ程度です。太った人は乗れません。横から見ると半円形で、両脇にウキみたいなものがついている3人乗りの舟です。長さもあまりないので、3人乗る場合は立ち乗りです。この舟で沖に出て、カツオを釣ると言うのです。

撮れ高がない!

その前に陸地で、カツオ釣りの練習をこなすことになりました。重たい竹に糸がついていて、その糸の先にココナッツをつけ、釣り上げる練習を何度もやらされます。「意味はあるのだろうか…」と思いつつも、やることが他にないので、散々繰り返しました。

そしていよいよ、海へ出ることに。キャメラマンやスタッフは僕の乗る舟に乗れないので、エンジンのついたボートに乗りました。そのボートに僕らの舟をつなぎ、2時間かけて沖まで出ます。さすがに途中で座りたくなりますが、少しでも腰を下ろそうとすると、僕の後ろにいるカツオ釣りの名人が「立て」と棒で突っつきます。帆がないので、代わりに人間が風を受ける役目を果たさなければいけないからなのだとか。僕の前にいる若者も、ずっと立っています。

ふと前を見ると、大海原のキラキラ光る水面を、カツオが飛んでいました。「あそこを目指せ!」と、舟は直進していきます。しかし途中で雨が降るなどして、漁場までなかなかたどり着けません。「本番まではまだ日がある、ここは引き返そう」と名人に言われて、「引き返すのかいっ!」と思いましたが、海の上だけにただ待つのも不可能です。これを繰り返すこと数日、ロケ的には撮れ高がありません。撮れているのは、僕が陸上でココナッツを釣り上げる姿のみ。

そしてとうとう、帰国というタイムリミットが翌日に迫ってきました――。(つづく)

原田龍二
1970年生まれ。ドラマやバラエティーで活躍する一方、芸能界きってのミステリー好きとして知られ、近著に『ミステリーチェイサー原田龍二の謎のいきものUMA大図鑑』がある。現在、『バラいろダンディ』(MX)で金曜MCを担当。YouTubeチャンネル『ニンゲンTV』を配信中。

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