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『でえれえ、やっちもねえ』著者:岩井志麻子〜話題の1冊☆著者インタビュー

『でえれえ、やっちもねえ』著者:岩井志麻子〜話題の1冊☆著者インタビュー
『でえれえ、やっちもねえ』著者:岩井志麻子/角川ホラー文庫

『でえれえ、やっちもねえ』角川ホラー文庫/660円

岩井志麻子(いわい・しまこ)
1964年、岡山県生まれ。99年に『ぼっけえ、きょうてえ』で日本ホラー小説大賞を受賞。同作を収録した短編集により山本周五郎賞も射止める。他に『岡山女』『魔羅節』『チャイ・コイ』(婦人公論文芸賞)、『自由恋愛』(島清恋愛文学賞)など著書多数。

――人間のいつの時代も変わらぬ〝業〟が出ていると評判です。そもそもホラーを書こうとしたきっかけは何だったのですか?

岩井 過去にさかのぼって正直に告白しますと、最初の夫に離婚を突き付けられ途方に暮れていたときに、何が何でも作家デビューしたいと焦っていました。話題になって、書籍化されて賞金も大きいのは、当時は江戸川乱歩賞と角川ホラー小説大賞。前者は絶対に無理だと書く前から分かっていたので、後者を狙いました。さらに大賞は最初から狙わず、異色作として目立って短編賞の佳作にでも引っかかればと、誰も手を出さない『岡山県の貧乏話』を題材にしました(笑)。

――本作は第6回日本ホラー小説大賞『ぼっけえ、きょうてえ』の後継作だそうですね。

岩井 作家になってからは順調に仕事をいただけましたが、芸能事務所に所属しテレビに出るようになると、そちらの方がお金になるし楽しいので、小説は職業として、商品を作って適正価格で提供という姿勢になっていきました。しかし、コロナの蔓延でテレビがすべて吹っ飛んだとき絶望したくないので、今こそ続きを書くべきと完成したのが『でえれえ、やっちもねえ』です。

昭和初期の南国が舞台の長編ホラーを書きたい

――江戸、明治、大正、昭和、4つの時代の岡山が舞台になっています。その理由は?

岩井 幕末は遠すぎて、生々しさがなく御伽話みたいでいいかもしれない、と思いました。明治はたぶん、前作がすべて明治が舞台だったので、前作ファンへの一種のサービス精神かもしれません。大正時代はエログロナンセンスが勃興し、フェミニズム運動も台頭してきたモダンな時代。いろいろと令和に通じるものがあるようで、資料を読むのが楽しかったですね。

――今年、作家人生35周年を迎えます。今後はどんな活動を予定していますか?

岩井 なぜか唐突に、まさに大彗星のように私の中にやってきたのが、明治生まれの詩人・金子光晴ブームです。本書に掲載されている『カユ・アピアピ』という小説は、金子光晴夫妻をモデルにしました。もちろんかなり脚色していますけどね。

コロナ収束後は金子先生が愛したマレーシアのバトゥ・パハに滞在し、昭和初期の南国が舞台の長編ホラーを書きたいですね。あと8月27日から公開される河崎実監督の映画『遊星王子2021』に出演しています。もしよかったら見てください。また、まだ公にできない某監督の映画にも出演しています。今後もお誘いいただけるなら、映画にも出続けたいですね。

(聞き手/程原ケン)

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