東京五輪の閉幕後には不況が訪れる。1964年の東京五輪後には、当時、戦後最大といわれた「昭和40年不況」に見舞われた。
今回も同じことが起きるのかは、何より新型コロナの収束にかかっている。そのためには、まず、これまでの対策の失敗をきちんと認めることだ。
7月に発表されたIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」によると、今年の中国の経済成長率が8.1%であるのに対して、日本は2.8%だ。しかも、今回の緊急事態宣言で、日本はさらなる下方修正に追い込まれる可能性が高い。一方、アメリカは4.9%、ユーロ圏は4.3%と、経済成長率で見ると日本が「独り負け」の状況にある。
経済だけではない。新型コロナウイルスによる人口100万人当たりの累計死亡者数は、8月2日現在で、中国が3.9人に対して日本は120人と、日本は中国の約30倍もの死亡者を出しているのだ。
そもそも安倍政権時代、日本の新型コロナ感染症対策は、うまくいっていると政府は主張していた。欧米がロックダウンや大規模検査による陽性者隔離など、厳しい対策を講じているのに対して、日本は自粛要請による緩い規制だけで、感染抑制に成功していると考えていたからだ。
しかし、その甘い判断は、山中伸弥・京都大教授の言う「ファクターX」の存在を無視したものだった。いまだに理由は解明されていないが、東アジア地域は新型コロナに感染しにくく、重症化しにくく、死亡しにくい。そのため、世界的流行が始まった頃から、日本だけでなく東アジア地域の感染は、欧米と比べてケタ違いに軽微だったのだ。
緩やかな封鎖さえできない東京の特殊性
東アジアの中で、中国と日本の決定的な違いは、PCR検査に対する姿勢である。中国は昨年、コロナ感染が拡大した武漢や青島で、市民全員の検査を実施した。そして8月2日に、武漢でわずか7人の陽性者が発覚すると、再び市民全員の検査を開始している。
これに対して、日本が医療として検査をするのは、重症者やそのリスクが高い者と、濃厚接触者に限られる。一般市民の検査は、国立感染症研究所の積極的疫学調査の一環として行われるだけである。なぜ、日本がここまで検査を嫌がるのかは謎だが、おそらく「検査は自分たちの縄張り」という厚生労働省の意識が強いからだろう。
また、世界各地で行われている都市封鎖も、日本では行われていない。海外の一部で実施されているような外出したら逮捕という強硬策は無理でも、列車や飛行機を止め、高速道路の利用を制限するなど、緩やかな都市封鎖は現行法でも可能である。それをやらないのは、東京の特殊性があるからだ。
政治、経済、文化のすべてが東京に一極集中している。その中で東京を封鎖したら、日本の経済に大きな被害が出てしまう。それに、地方を救うために東京を犠牲にするという発想そのものが、東京に住む政治家や官僚からは出てこない。
そして、政府が決め手と称するワクチンだ。政府は9月末までにファイザー製1億7000万回、モデルナ製5000万回の合計2億2000万回分のワクチンが入ってくるとしている。2回接種として1億1000万人分である。
ワクチン接種対象の12歳以上の人口が1億1000万人だから、全員が打てるワクチンが入ってくるはずだ。ところが、首都圏では中年層がワクチン接種の予約を取ろうとしても、まったく予約が入らない状態が続いている。コロナ対策の第一歩は、真実を明らかにすることからだろう。
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