社会

創価学会と総選挙“裏”《後編》深刻なデジタル格差~ジャーナリスト山田直樹

10月18日には、東京から山口那津男公明党代表らが駆け付け、なんばや梅田の大阪中枢で維新の吉村洋文府知事、松井一郎市長ともども街頭演説(説明会)を行った。公明党党首が自民党以外の政党トップと共に演説する光景自体が、それこそ〝あり得ない〟こと。その傍らで三色旗を掲げた学会員とおぼしき若者が、都構想反対のアピールを行う姿も――。

「住民投票に勝っても負けても、と両含みの戦術を取るのはかなり難しい。維新側は退路を断っているけれど、公明党サイドは山口氏が『都構想の実現に法的根拠を与える大都市地域特別区設置法について、国会で公明党が与野党の合意形成をリードし、2012年に成立した』とか、公明党が提案した住民サービス維持やコスト削減など4つの改善項目が反映されたから賛成しようと、自党の成果ばかりアピールする始末。山口氏の目線の先には、大阪府の創価学会員の説得しか見えていない印象でした」(同)

構想否定の選挙結果が出ても、おそらく菅首相は関西の公明党議員小選挙区に手は出すまい。維新とはその点で手打ちがなされたと思われる。

「つまり、創価学会自体にとっては、議席が減るわけではないから負けてもダメージは小さいだろう」(大阪府創価学会地域幹部)

今回、菅首相のカウンターパートとして、俄然、注目され始めた佐藤浩副会長の思考はあくまで国政である。

「創価学会反対派への対処、攻撃戦術など、実際に他から見れば〝汚れ仕事〟と言われる役割を担い、結果を出してきた。反学会派は、自身への攻撃の背後に佐藤氏の指示があると何度も指摘してきましたが、ウラは取りきれませんでした。つまり、尻尾を掴ませなかった。こうした経験があって、一点集中で菅首相を官房長時代から〝籠絡〟できたんではないですか」(学会ウオッチャー)

創価学会の選挙戦“ネット活用”によるリスク増

1991年に創価学会が日蓮正宗から破門されて以来、この人物の名前は何度も浮上した。日蓮正宗法主の「買春」を巡る裁判でも、黒い皮ジャンを身にまとい、手下(?)に耳打ちして指示を出すのを東京地裁で幾度か目にした。まるで親分そのものの姿である。小泉政権時代の話だから、その後、手腕を買われて厄介な対自民党政治家対策に起用されたと推測しうる。しかも、公明党を差し置いて首相と交渉できるポジションまで上り詰めた。

では、佐藤副会長が公明党に半ば「下命」した個人後援会方式とネット活用で学会票は維持、または拡大できるのか。言い換えれば、次期総選挙に勝てるのか。

先に述べた学会内情報格差や若年支持者の拡大停滞など、あまりにも問題は大きい。例えば、安倍前首相の総裁任期一杯(来年9月)まで菅首相が解散しなかった場合においても、創価学会票が現状維持できるかは五分五分だ。

それは「コロナ禍で失った顧客を元通り以上に戻せるか」という日本社会の課題と同等以上の重さが、宗教組織にはあるからだ。新宗教の大教団は今年、寄附収入を大幅に減らすだろう。創価学会とて、年末の財務が例年通り維持できるか疑問符がつく。

「選挙では、会員は持ち出しで行動します。そのお金は、表面上、ボランティアだから許されるのであって、組織から支給されたら選挙違反。そのお金を捻出できない会員は少なからずいる。外出を避けるポリシーのメンバーもいます。SNSの場合は、訪問と違い断られて拒否されたら、もうアプローチできないし、アプローチ自体が容易にバラされる可能性や『学会員のやり口』とかあげつらわれて、炎上することだってあり得ます。それがデジタルの怖いところ。会員内部ならまだしも、ネットで外に拡げるリスクは高いんです」

これは某IT企業に勤める学会員の吐露だ。彼は、SNSで個人後援会への勧誘をはじめてすぐ、自身が学会員であることが会社にバレた。外部からのネットタレコミが原因だった。

創価学会が選挙戦で抱えるリスクは相当高い。ただし、創価学会が選挙で勝つことが、今や自民党の「絶対国防圏」になりつつある点を付け加えておく。

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