NHKのぬるま湯体質を改革するのは国民からの支持も得られやすいが、一方で「改革の名を借りつつ、NHKを政府の意のままにコントロールする」という指摘も絶えない。
「菅首相とNHKのバトルでいえば、かつて『NHK改革は容易ではない』と唱えた総務省の放送政策課長を更迭するなど、人事に手を突っ込んだ過去がある。そのためNHKも一定の譲歩は示してきたが、他方では、みずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸氏を会長として迎え、NHK側も抵抗するでしょう。前田会長も週刊文春の取材で概ね『健全で質の高い放送維持には受信料は決して高額ではない。(国の)報道機関介入は尋常ではない』とし、まずは抗戦の姿勢を見せています」(放送関係者)
もう1つのポイントである高橋氏のNHK分割民営化論とはどんなものか。
「NHKをA『公共放送のNHK』とB『民間放送のNHK』に分割することです。まず、Aの『公共放送のNHK』は、受信料を徴収する準公共放送に特化する。放送内容は災害放送、教育番組などに徹する。また、自民党タカ派国会議員が『NHKの偏向報道だ』と問題視するドキュメンタリー番組や紅白歌合戦、ドラマなどはB『民間放送のNHK』として受信料に頼らず、民放と同じくCM収入などで賄うようにするというのが高橋論だ。そうすれば、現在、地上波と衛星放送併せて年間約2万5000円の受信料は、制作コストも人件費も極端にカットできるため、月々200~300円にできる。菅首相も高橋論をメインにNHKに切り込むのではともっぱらです」(前出・霞が関官僚)
NHK完全コントロール下は菅首相の積年の願望
仮に、分割民営化論でNHKを揺さぶれば、事態はどう動くのか。
「菅首相の最側近で、日本学術会議の任命拒否問題の黒幕とされる杉田和博官房副長官に近い板野裕爾NHK専務理事らが力を増すといわれている。そして、菅内閣や自民党に忖度するNHKに大変貌を遂げる可能性が高い。かくして、菅首相の積年の願望であるNHKを完全コントロール下に置くことが完成する。NHKを攻略できれば、次は自民党や政権に対して厳しい論調の一部民放をターゲットに第2の矢を放ってくるでしょう」(野党関係者)
NHKも民放もコントロールが可能となれば、当然、次なる標的として浮上するのは新聞だ。新聞編集委員はこう危惧する。
「デジタル庁の新設は、将来的に新聞コントロールを見据えての動きという情報もあるほど。菅首相はこうと信じたら、成功するまでテコでも動かない性格なだけに、安倍前首相よりも厄介で不気味だ。それは日本学術会議問題で6人の委員候補を拒否した姿勢でも明白です」
NHK改革はマスコミにとって対岸の火事ではない。
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