
もとはイソップ童話のひとつで、室町時代に日本に伝えられた『ウサギとカメ』。歩く遅さをバカにされたカメが、ウサギにかけっこ勝負を挑むも、圧倒的大差をつけられる。すると、途中で居眠りしているウサギを追い越し、ウサギが目を覚ましたときにはカメがゴールしていたという話だ。
「油断大敵」がテーマとなっている本作だが、実は、これも続きが存在する。
ウサギの後日談のハッピーエンドと、カメの後日談のバッドエンドの2パターンがあり、後者が恐ろしいのだ。
かけっこ勝負でウサギに勝って自信をつけたカメは、すっかり増長してしまう。そして、自分にできないことはないと思い、空も飛べると考えた。
カメは、ワシに頼んで遥か上空まで運んでもらい、落としてもらった。すると、当然ながらカメが空を飛べるはずもなく、そのまま地面に落下。見るも無残に砕け散った、というもの。
続編で、カメの性格が真逆になっているのが興味深い。まさに大どんでん返しの結末である。
『さるかに合戦』に隠されたメッセージ

江戸時代から伝わる「日本五大昔話」のひとつである『さるかに合戦』。ずる賢いサルが、種を植えれば柿がたくさん実るからと、自分の持っている柿の種をカニの持っているおむすびと交換させた。
カニの植えた柿の種は大きく成長し、柿がたくさん実った。サルは、カニの代わりに木に登るも、自分が食べるばかり。カニが催促すると、サルの投げた青い柿の実に当たって死んでしまう。
その後、カニのお腹から生まれた子供たちは、親の敵を討つべく、蜂、栗、臼と協力し、サルを懲らしめる。最終的にサルは臼の下敷きになって死ぬという話だ。
「因果応報」がテーマの本作だが、実は、江戸時代の農民の生活を暗示している。
カニの子供たちはお米、つまり農民の比喩。サルは、農民を苦しめる盗賊の比喩。蜂や栗、臼は、盗賊を退治しようと共に戦った村人の比喩なのだ。
つまり、盗賊への戒めとして、悪事を働けばいつか自分に悪い報いがあるというメッセージが込められていたのだ。
『おむすびころりん』ねずみの穴は…

室町時代に成立した『御伽草子』のひとつである『おむすびころりん』。おじいさんの落としたおむすびが、山の斜面を転がり、木の根のねずみが棲む穴に落ちる。
おじいさんが穴をのぞくと、ねずみたちがお礼に小判入りのつづらをくれた。すると、強欲なおじいさんがマネするも、ねずみがつづらを出し渋るので猫の声マネをしたら、ねずみたちに噛み付かれて退散したという話だ。
この話、室町時代の『ねずみ浄土』という物語が原作なのだが、結末は怖い。強欲なおじいさんが、ねずみの穴の宝をすべて奪おうと脅してきたので、ねずみたちは明かりを消して逃げた。穴は真っ暗闇となり、おじいさんは閉じ込められてしまったのだ。
室町時代は、ねずみを「根住み」と書いた。ねずみの穴は「根の国」とされ、死者が住む「黄泉の国」に通じていると考えられていた。
つまり、ねずみの穴に入ることは、死を意味するわけだ。そう考えると、かわいいねずみたちも死神のように見えてくる。
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