昔話の代名詞と言えるほど、日本で最も有名な昔話である『桃太郎』。桃から生まれた桃太郎が鬼退治に行く話だ。誰もが知る昔話だが、よく考えると、疑問に思う点がいくつかある。
まず、そもそも桃太郎は何者なのか。日本では、古くから「桃」は子宝の象徴とされてきた。本作では、男の子の入った桃が川から流れてきて老夫婦に拾われるが、逆に、その桃を手放した人がいる。
実は、かつて日本の貧しい地域では、生まれた子供を育てられず、赤子のうちに殺してしまう風習があった。いわゆる「間引き」である。殺し方はさまざまだが、赤子を生きたまま川に流すこともあったという。
つまり、桃太郎は、間引きされた子供を暗示しているのだ。
さらに、桃太郎が鬼退治のお供にイヌ、サル、キジという、常識的に考えて戦力になりそうにない動物を選んだことも疑問だが、実はこれにも意味がある。
イヌは、居ぬ。ここには存在しないこと。サルは、去る。ここから去っていくこと。キジは、帰じ。ここには帰ってこないということ。つまり、この3匹も間引きされた子供を暗示しているのである。
『桃太郎』の裏設定は諸説あり、この間引き説もそのひとつに過ぎない。作品が成立した時代と作者は不明だが、その時代の文化や人々の心情がストーリーに反映されているはずだ。
後世に語り継がれていく中で、子供向けに怖い要素は削除されてきたのだろうが、本来の『桃太郎』は、日本の黒歴史を描いた悲劇だったのかもしれない。
助けた亀に利用された浦島太郎
現在でも、CMに使われるほどなじみのある昔話『浦島太郎』。漁師の浦島太郎が、助けた亀に竜宮城へ招待される話だ。
本作も、時を経て子供向けの内容に変えられている。では、本来はどんな内容だったのか。
まず、冒頭から違う。浦島は漁師ではなく「遊び人」。男たちに絡まれている「お亀」という女性を助けた恩で、「竜宮」という遊郭に招待される。
そこで差し出されたキセルを吸うと多幸感に包まれたが、それは麻薬だった。目の前にいる美女たちは幻覚で、実際は醜い女たち。浦島は、女たちに子供を産ませるだけの〝道具〟として利用され、次第に痩せ細り、おじいさんのような風貌に…。
用済みとなった浦島は竜宮を出るが、町は一変。途方に暮れた浦島がお土産の玉手箱を開けると、そこにはキセルが…。幻覚を見た浦島は、崖から足を滑らせて転落死してしまったのだ。
こんな話、子供にはとても読み聞かせできない。
本当は怖い昔話②に続く
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