世界文化遺産の富士山の麓から標高2305メートルの5合目まで、脱炭素の次世代型路面電車(LRT)を走らせる富士登山鉄道構想が検討されているが、山梨県富士吉田市と富士急行の反対で暗礁に乗り上げている。
「富士吉田市の反対の背景には、山梨県の長崎幸太郎知事と富士急行の対立がある。この問題が解決しない限り、LRTの実現は難しい」(地元テレビ関係者)
今年2月に山梨県の有識者検討会が、登山鉄道整備を推進するプロジェクト実現に向けた報告書をまとめたことで、鉄道構想は一歩前進したかに見えた。
「ところが、富士五湖観光連盟会長の堀内光一郎・富士急行社長が、5月21日に開かれた連盟総会で〝推進に反対する〟意向を明らかにしたんです」(同)
堀内会長は「構想の理念、方向性。なんのために富士登山鉄道をやるのか不透明」と述べ、富士吉田市の堀内茂市長も「富士山は信仰の山で傷つけたくない。地元にとって富士登山鉄道は必要と感じていない」と反対し、県と地元の溝が深まっているのだ。
背景に県有地問題を巡る泥沼裁判
「富士急グループは鉄道、バス、ホテル、テーマパーク『富士急ハイランド』を運営し、富士山観光には欠かせない大企業です。オーナーの堀内一族は絶大な力を誇っている」(地元記者)
県と富士急行、富士吉田市が対立した背景には、県有地問題をめぐる泥沼裁判が影響している。
「富士急行は富士山周辺の県有地440ヘクタールを県から借り受け、別荘などの開発をしているんですが、年間賃料は約3億円。県は賃料を20億円に引き上げることが妥当との見解を示して、現在の賃貸借契約を無効とした。同社は有効性の確認を求めて3月に甲府地裁に提訴。富士急行に対して、県は損害賠償など約92億円を求めて反訴した」(同)
山梨県政界関係者の話。
「長崎知事は4年前の衆院選で、光一郎社長の妻・堀内詔子環境副大臣と熾烈な選挙戦を繰り広げて敗れている。〝その敵を長崎で〟とばかりに、長崎知事は堀内一族にケンカを売ったと言われています」
富士山の麓で代理戦争。
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