
東京オリンピックの閉幕を待って、夏の甲子園大会(第103回全国高等学校野球選手権大会)が始まる。今夏の開催決定以降、「五輪の開催に異議を唱えていた新聞社が高校野球に何も言おうとしないのはおかしい」といった厳しい意見も聞かれたが、〝学校部活動〟には利権が絡んでいない。
さらに今大会は感染防止の観点から「甲子園の土」の持ち帰りは不可と決まり、球児たちは出場した証しを結果で残すしかなくなった。いろいろな意味で、厳しい戦いが繰り広げられる。
「6月2日、日本高野連はオンラインによる臨時運営委員会を開き、代表校関係者から感染者、及びその疑いのある者が出ても代表校の差し替えはしないと決めました。さらに原則無観客、ブラスバンドは1校50人目処、大会中は緊急対策本部が対応に当たるなど詳細を決め、今回から3回戦2日目と準々決勝の間に休養日が新設されて連戦ナシとなることが確実となりました」(学生野球担当記者)
球児たちの敵は新型コロナウイルスだけではない。熱中症対策も行われたようだが、無観客となる大会運営について、こんな確認もされているそうだ。
「プロ野球スカウトはスタンドに入れるのか、人数制限はあるのか?」
大会は縮小傾向にあるが、ドラフト1位級の原石は例年以上だという。
「大会ナンバー1投手は、静岡の右腕・高須大雅でしょう。192センチの長身で、キレ味抜群の直球をテンポ良く投げ込んできます」(在京球団スカウト)
球速は140キロ台半ば。しかし、長身から投げ下ろすボールの角度が絶品で、コントロールが良くフィールディングもうまい。イメージは「制球のいい藤浪晋太郎」で、千葉ロッテの佐々木朗希にも雰囲気が似ており、昨秋から複数球団のスカウトが張り付いていた。
「静岡は『中京地区では最強』と見られていましたが、攻撃面で課題を残しています。選手個々の能力は高いんですが、打線のつながりがイマイチと指摘されています」(地元紙記者)
3年ぶりに出場を決めた名門・横浜高校
左腕では、作新学院(栃木)の井上力斗がいい。1年生の途中からエースナンバーを背負う投手で、スライダーのキレに定評がある。
「イメージは、高卒2年目でブレークしたオリックス宮城大弥に近い」(前出・スカウト)
明徳義塾(高知)の左腕・代木大和もいる。高知県には森木大智という12球団ゾッコンの右腕がいたが、県予選決勝で下している。明徳の勝因は、変則左腕の吉村優聖歩、右サイドの矢野勢也の2投手が控えており、代木を温存できたことだ。打線も強力で、優勝候補の一角である。
「投手力なら、浦和学院(埼玉)。2年生の宮城誇南、3年の三奈木亜星がニ枚看板で、クラスター発生で1月から1カ月余も活動休止となりましたが、試合を積み重ねて強くなりました」(スポーツ紙記者)
また「復活は本当か?」とスカウトが注視しているのが、横浜の左腕・金井慎之介だ。昨秋と春季大会は大不振だったが、神奈川県予選では好投した。1年生左腕・杉山遥希もいい。
「楽天・涌井秀章の同期だった村田浩明氏が監督となりました。3年ぶりに代表を掴み取りましたが、全国制覇を成し遂げないと〝名門復活〟とは言えません」(同)
横浜の復活に期待する高校野球ファンは多い。また、昨春、村田監督にチームが託されると、あの小倉清一郎元部長も顔を見せるようになった。
小倉氏は部長職を退任した後、全国各地の高校をまわって指導を続けていた。おのずと横浜とは距離もできていたが、教え子でもある村田監督の就任を知り、グラウンドに駆けつけた。
小倉氏の教えは、「反復練習の積み重ね」だそうだ。走者役を置き、実戦を想定した守備練習に時間を割いていた。プレーを中断させ球児たちに注意を与え、また練習と注意の繰り返しだ。しかし、一球に集中し、緊張感の中でも堅実なプレーをするのが、横浜の野球。名門復活の道とは、そういう地味な練習の積み重ねなのかもしれない。
ダブルエース擁する大阪桐蔭はV候補
関西勢で不気味なのは、神戸国際大付(兵庫)だ。二刀流だった阪上翔也が打者に専念し、2年生左腕の楠本晴紀も成長して4年ぶりの代表となった。阪上は足も速く、もともと打線のいいチームであるだけに、チャンスに一気にたたみかけるような試合も仕掛けてきそうだ。
「打者では、前橋育英(群馬)の皆川岳飛が注目です。走攻守、3拍子揃った選手です」(前出・スカウト)
伝統校で、元プロ野球選手の中谷仁監督率いる智弁和歌山だが、三塁を守る高嶋奨哉は同校の元監督で甲子園通算最多勝利数(=68勝)を誇る高嶋仁氏の孫。「超高校級」と称された小園健太(市和歌山)を県大会決勝で退けた原動力は、投打にわたる層の厚さではなく世代を超えた継承の力だったのかもしれない。
「中京大中京の畔柳亨丞投手も予選で散った逸材の1人です。今年から準決勝と決勝の間にも1日休みが入るので、左の松浦慶斗、右の関戸康介のダブルエースを持つ大阪桐蔭が有利になります。V候補は大阪桐蔭か、静岡でしょう」(アマ野球担当記者)
彼らは、コロナと戦って試練を乗り越えてきた世代だ。その逞しさにエールを送ろう。
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