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ソニー純利益1兆円超え“エンタメ転換”で復活!~企業経済深層レポート

ソニー純利益1兆円超え“エンタメ転換”で復活!~企業経済深層レポート 
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

ソニーグループの2021年3月期決算における純利益が、前年度から約2倍増の1兆1718億円と初めて1兆円を超えた。

ソニーは2000年前後、家電販売の不振や新商品開発の遅れなどで足踏みし、一時は苦境に陥っていただけに、経済界からは「奇跡の大復活」という声も上がっている。復活劇の背景には、いったい何があったのか。

全国紙経済部記者が解説する。

「21年3月期、国内企業で純利益1兆円を超えたのは、ソニーとトヨタ自動車(約2.2兆円)、ソフトバンクグループ(約5兆円)の3社だけです。ソニーの稼ぎ頭はズバリ、映画、ゲーム、音楽などのエンターテインメント(エンタメ)事業。コロナ禍による巣ごもり需要もあり、今やソニーの屋台骨を支えています」

家電メーカー関係者が解説する。

「かつてのソニーといえば、トランジスタ製品やトリニトロンテレビで高度経済成長をけん引し、80年代から90年代にかけてはウォークマン、ハンディカムなどのヒット商品を連発。最先端の技術を用いた家電を中心に〝世界のSONY〟として名を馳せました」

ところが、2000年代に入るとソニーを含めた日本の家電メーカーは、中国や韓国の安価で売る新興企業に猛追され、ついには先を越されることになる。さらには、08年のリーマンショックで、当時のソニーの主力製品だった液晶テレビやパソコンなどは出荷台数が大きく落ち込み、経営難にあえぐようになった。

経営コンサルタントが指摘する。

「窮地に追い詰められたソニーは、まず事業のスリム化を目指しました。『VAIO(バイオ)』などの名品を生み出し、熱烈なファンも多かったパソコン事業を筆頭に、電池事業など不採算部門をバッサリと切り捨てた。赤字続きのテレビ事業は分社化し、1万5000人に及ぶ大リストラを断行。大胆な合理化策で生き残りを図りました」

大増収の基盤となっている「PS5」の爆売れ

ソニーにとって看板商品での撤退は初めての経験だったが、再建に取り組む心構えとして、「創造力と技術の力で、世界を感動で満たす」という創業の原点に立ち返ったという。

ソニーは1946年5月、資本金19万円、従業員数20人程度の小さな会社「東京通信工業」としてスタートした。それに先立つ同年1月、創業者の井深大は自ら筆を執り、新会社発足の目的を明らかにした設立趣意書を記している。

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

このように記された東京通信工業の設立趣意書には、ソニーの〝ものづくりの精神〟が溢れている。

そして生まれたのが、現在のエンタメ事業に直結する動きだ。そのベースは94年から売り出している家庭用ゲーム機『プレイステーション(PS)』にある。

現行のPS5は20年11月に売り出され、21年3月末までの販売台数は780万台と、目標を20万台上回る売れ行きを示している。さらに、PSで月々定額料金を支払う会員は20年だけで610万人も増加し、現在は4760万人に達して大増収の基盤となっている。

IT企業の関係者が解説する。

「ゲームと併せ映画や音楽事業にも力が入る。音楽では19年12月にYOASOBIが配信リリースした『夜に駆ける』が、ストリーミング・ソング・チャートで累計再生回数が5億回を突破。世界中で異例の大ヒットを記録しました」

映画事業では20年10月に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の累計来場者数が約2900万人を記録し、大台となる興行収入400億円を突破。日本を含めた全世界(45の国と地域)での累計来場者数は約4200万人、興行収入は約517億円の大ヒットとなった。

電気自動車『ビジョンS』の完成度と技術力

では、今後のソニーはどこに向かうのか。今年5月、ソニーグループの吉田憲一郎社長は、オンラインで開催した経営方針説明会で「現在、ソニーは世界で1億6000万人とエンターテインメントで直接つながっている。これを今後は10億人に広げたい」と述べた。

また、3年間でエンタメ事業を中心に2兆円を投じるという。つまり、かつては家電事業で世界を席巻したソニーが、生き残りをかけてエンタメ事業に大きく舵を切り、当面の継続宣言をしたことになる。

一方で気になる情報もある。前出の経営コンサルタントが指摘する。

「昨年発表した試作の電気自動車『ビジョンS』のことです。ソニーは『車を造るつもりはない。あくまでも技術開発のため』と公言するが、自動車メーカーの関係者はその完成度と技術力に度肝を抜かれたという。エンタメ事業を重視しながら、ソニーが別の道を模索している気配がビジョンSから感じられる」

ある日、ソニーがまったく新たな事業に乗り出しても不思議ではない。冬の時代を乗り越えた新生ソニーに期待が膨らむ。

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