
直前までいろいろあったけど、ようやく東京オリンピックが開催された。アスリートたちの頑張る姿を見ていると、始まるまでにあれだけゴタゴタしていたことを忘れそうになるね。
コロナ対策に関することもそうだけど、オリンピック開催を契機にあぶり出されたさまざまな問題については、閉会後も議論が続いてほしいと思う。
例えば、競技中に撮られた写真が「性的画像」として出回ってしまうことに対して、アスリート側から問題提起がなされたことも忘れないようにしたい。
この問題については、JOCをはじめとするスポーツ関連団体が「アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みについて」という文書を発表し、性的目的のSNS投稿やWEB掲載の情報提供を求める報告フォームをホームページに設置した。このサイトに寄せられた情報を元に、アダルトサイトに女子選手の競技画像を転載した男2人を著作権法違反容疑で逮捕するなどの成果もあった。
このような「性的画像」がネット上に流出してしまうことに対しては、以前から声を上げていた選手も多かった。俺は撮影者が純粋に競技の模様を撮ったものだとしても、アスリート本人が「この写真は嫌だ」といったら載せない、というのが基本ルールだと思う。だから、ようやく事態が前に進んだということだ。
ただ、スポーツ競技中の写真というのは、ジャンルとしては「報道」になる。事件や事故と同じで、ニュースとして撮影された画像に関しては基本的に写っている本人のチェックはなく、メディア側の判断で掲載されるし、報道されてしまう。
意見はいろいろあっていい
プロスポーツなら、所属しているチームや運営元が選手の肖像権を管理しているから、事前に本人やマネージメント側が写真をチェックする場合もあるけど、アマチュア競技は事実上野放し状態だと思う。だからといって「性的な写真は載せるな」というのも難しい。
なぜなら、その写真が性的にどうかという判断も、写真を見た人の感性で変わるからね。同じ写真でも、美しいと思う人もいれば、スポーツをする肉体の躍動に感動する人もいる。それをセクシーと感じる人だっているかもしれない。
俺たちがリングで暴れまわってるプロレスの写真だって、性的に受け止める人がいるかもしれない。
だからこそ、勝手に使われて抗議することができるのは、写っている本人と撮影した人だけ。それ以外の第三者が「性的だ」と声を上げて、掲載をやめさせるというのは間違っていると思う。それを言い出したら、『週刊実話』なんて、「性的な写真ばかりだ!」と文句が殺到してしまう。他の人から見えないように「一冊まるごと袋とじにしろ!」とかね(笑)。
報道でも娯楽でも、その写真をどう受け取るかどうかは、見る人の自由であってほしい。一部のカメラマンやメディアは、ビジネスとして性的なイメージを意識した写真を扱っているかもしれない。それでも本心では競技中の姿を通して何かを伝えること、写真を見た人の心を動かすことを願っているはずだ。
オリンピックの報道でも、メダル奪取に感動する人もいれば「コロナ禍で何をやってるんだ」と怒ってる人もいる。意見はいろいろあっていいから、とことん話し合って問題を解決していくことが大事だな。
蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。
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