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『ヤマトシジミ』愛知県西尾市/矢作川河口産〜日本全国☆釣り行脚

『ヤマトシジミ』~愛知県西尾市/矢作川河口産〜日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

中年になると時間の経過が殊更に早く感じられるもので、「アレからもう○年も経つのかぁ…」などと目まいを覚えることが増えております。我ながら、オッサンになりましたなぁ…。

「そういえば昨年の今頃は何をしていたっけ?」

そう思って本誌のバックナンバーを捲ってみたところ、思い出しました。大阪府の淀川でシジミ掘りなんぞをしてましたなぁ。前年に襲来した台風によって壊滅的なダメージがあったのか、親貝の採捕には苦戦したものの稚貝はなかなかの量が確認でき、大増水がなければ2~3年後は楽しみかなぁ、という結果でした。

そんなことを確認した直後のタイミングで訪れた碧南市中部電力釣り広場でしたが、釣り場から引き揚げる最中に矢作川の存在を思い出しました。

「江戸の敵を長崎で討つ」ではありませんが、大阪での欲求不満を愛知で晴らそうと思います。突発的な思いつきでの潮干狩りではありますが、先ほど竿をしまっていた時点で潮位がだいぶ下がっていたので、それなりに干潟も露出しているでしょう(多分)。

そうと決まれば迷っているヒマはありません。

「迷わず行けよ、行けばわかるさ。イクぞ~っ!」

澄んだ水が心地いい!

急きょ行き先を変更し、矢作川沿いの道を進みます。すぐ近くには蜆川なる小河川もあり、昔からシジミ掘りを楽しむ地元師も多い矢作川ですからハズレはないでしょう。

休日であれば、地元の人や家族連れが楽しんでいるはずの河原に人の姿はなく、閑散としております。さすがに平日の夕方前ですから静かなものです。

『ヤマトシジミ』~愛知県西尾市/矢作川河口産〜日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

さっそく軍手を装着して水際まで進み、足元の砂をまさぐります。それにしても矢作川の底質と言いますか、砂の質と水質の良いことといったらありません。昨年掘った大阪の淀川、事あるごとに潮干狩りに出かける東京の江戸川や多摩川といった都市河川に慣れているせいか、粒子がやや粗くてサラサラとした砂、そして澄んだ水が、なんとも心地よく感じられます。

気分よく砂をまさぐっていると、小さなシジミがポロポロと出てきます。さすがに持ち帰るのには忍びない大きさではありますが、その多さには驚嘆させられます。

矢作川はかつて河口堰の建設が計画されておりましたが、10年ほど前に中止となって現在の姿があります。こういった美しい環境や、たくさんの小シジミを目にするにつけ、環境保全に対する先人の尽力をありがたく感じる次第です。

手のひらで軽く転がすあの感覚

さて、砂をまさぐるうち、手のひらに硬い感触がありました。ポロッと出てきたのは、まずまずの大きさのヤマトシジミです。

『ヤマトシジミ』~愛知県西尾市/矢作川河口産〜日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

「いるじゃないの~♪」

まさぐる手に力も入るというものです。ちなみに、この〝まさぐり〟の作法ですが、ソフトタッチが重要。お胸の小さいオネイサンのビーチクを手のひらで軽く転がすあの感覚、と言えば分かりやすいでしょうか。

「ええか~? ええのんか~?」

誰もいない夕方の広い河原で独り言を呟きつつ、一人で妄想に浸りながらの潮干狩りを楽しみます。ニヤニヤしてブツブツ言いながら、一人分の味噌汁には十分な量を確保し、薄暗くなった河原を後にしたのでありました。

持ち帰ったシジミは一晩砂抜きをしてから味噌汁にしました。シジミには肝臓を労る「オルニチン」なる成分が豊富だそうですからね。ただ、味噌汁だけではツマミとして物足りませんから、豊橋名産『鯛竹輪』も食卓に並べて晩酌を開始します。

『ヤマトシジミ』~愛知県西尾市/矢作川河口産〜日本全国☆釣り行脚 
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

まずは味噌汁をひとすすり。シジミにありがちな都市河川臭は皆無で、シジミらしい風味がしっかりと感じられます。これはおいしい! 鯛竹輪とともに、素朴ながらも旨い肴にワンカップが進みます。

ちょいと立ち寄って、遊びがてらに晩酌のオカズ分を確保する。そんな遊びが楽しめるのも豊かな自然があってのこと。そのありがたみを舌と肝臓に感じつつ、次の釣行に思いを馳せる夜でありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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