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東京五輪のさなか最強のコロナ第5波到来…~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

東京五輪のさなか最強のコロナ第5波到来…~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 
森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 (C)週刊実話Web

東京五輪のさなか、感染拡大が急加速している。7月27日、東京都が確認した新型コロナウイルスの新たな感染者数は2848人。これまで最も多かった2520人を超えて過去最多を更新した。いつ、この感染第5波がピークアウトするのか目途は立っていない。

政府は7月12日から東京都に対する緊急事態宣言を発出したが、効果はほとんど期待できない。繁華街の人出がまったく減っていないからだ。深夜の繁華街では時短要請どころか、酒類の提供禁止要請を無視する店が続出している。人々の行動は、緊急事態宣言に反応していないのだ。

それは当然だ。東京都独自の時短要請を含めると、今年に入って東京都で自粛要請が出されなかった日は1日もない。結局「今が正念場」と言われ続けたことで、誰も聞く耳を持たなくなってしまったのだ。

さらに恐ろしいことが起きている。政府の「基本的対処方針分科会」の委員を務める三重病院の谷口清州院長は、7月16日の名古屋テレビの番組で、東京都が把握している数の4倍程度の感染者がいるだろうという見解を示した。私は、谷口氏の見立ては正しいと思う。東京都は感染急増を前にして、一向にPCR検査数を拡大しておらず、無症状の感染者が街にあふれているとみられるからだ。

しかも、インド由来のデルタ株が拡大し、夏休みに伴う人流の増加で、今後、感染第5波は、東京都の感染者数が1万人を超える未経験ゾーンに突入していくのではないか。

分科会の意見に耳を貸さない菅義偉総理

高齢者へのワクチン接種が進み、重症患者数が落ち着いているから大丈夫だという見方は、間違っている。重症化しなくても入院患者は増え始めており、普通の病気やケガで入院できなくなる医療崩壊が間近に迫っているのだ。

実は分科会委員の発言もここにきて大きな変化を見せている。7月15日の参院内閣委員会の閉会中審査で、尾身茂会長が「人々の行動制限だけに頼るという時代は、もう終わりつつある」との認識を示した。そのうえで「ワクチン、検査、QRコード、二酸化炭素モニター、下水調査といったものを今まで以上に加速してもらえば、国民ももうちょっと頑張ってみようという気が起きるのではないか」と話したのだ。

また、谷口氏も新たな対策の手段として、海外の都市封鎖や大規模検査の事例を紹介している。分科会は新型コロナ発生以来、一貫して大規模検査を否定してきた。そこに踏み込まざるを得ないほど、感染第5波が深刻だということだろう。

しかし、菅義偉総理は分科会の意見に耳を貸していない。ワクチン接種でいえば、アストラゼネカ製ワクチンを公的接種で用いたり、国産ワクチンを早期投入したりすればよいのだが、その気配はまったくない。東京封鎖や大規模検査が実行に移される可能性は、限りなくゼロに近いのだ。

残念ながら、感染爆発で医療崩壊を起こさないと、政府が重い腰を上げることはないかもしれない。五輪閉幕後に、コロナ感染は過去最悪の事態を迎えそうだ。

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