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ノンアルビール躍進! 大手各社の開発競争が激化~企業経済深層レポート

ノンアルビール躍進! 大手各社の開発競争が激化~企業経済深層レポート 
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛要請により、飲食店の酒類提供は大幅に制限されているが、一方でノンアルコールビール(ノンアルビール)の需要が高まっている。

これを受け、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの国内ビール大手4社は、一斉にノンアルビールの増産に力を入れ始めた。

ビールメーカー関係者が語る。

「6月はキリンが前年同月比の約2倍、アサヒが同じく約2割、サントリーが約1割を増産した。サッポロは他メーカーに先駆け、5月の段階で同8割増産しています」

実のところノンアルビールの増産は、今年5月、6月に限ったことではなく、昨年から活発化している。

「2020年のノンアルビール市場は、出荷額が726億円で前年を4%あまり上回っている。総合マーケティング調査会社『富士経済』によれば、21年は出荷額が775億円で前年を6.7%上回ると予測する。その反面、20年のビール系飲料全体(ビール、発泡酒、第3のビール)の市場規模は1兆5718億円、前年比で10.6%も下回り、今年はさらに縮小すると予測されます」(同)

ノンアルビールが伸びて、ビール系飲料がなぜ下がっているのか。銀行系シンクタンク関係者は「コロナ禍での2つの要因がある」と指摘する。

「1つは、昨年からの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出で、飲食店の酒類提供が大幅に制限されたことです。これでビールを含むアルコール類は、すべて売り上げが激減しました。そこで酒類を提供できない飲食店が、代替としてノンアル飲料の提供に力を入れたのです」(同)

アルコール商品の排除は世界的な傾向

2つ目の要因はコロナ禍での外出自粛やテレワーク推進で、頻繁に「家飲み」が行われるようになり、健康面を気遣う人が増加したことだという。

「サントリーが20年に実施したノンアル飲料の意識調査では、『健康を気にするようになった』に38%、『休肝日を増やす』に33.4%の回答がありました。また、コロナ禍での巣ごもり以降、運動不足やカロリー制限のために、ノンアル飲料を飲む人が増えています」(同)

コロナ禍での影響に加え、ノンアルビールが伸びる別の要素もあるという。フードアナリストが解説する。

「最近の国際社会の動向です。15年9月の国連サミットで『SDGs』(持続可能な開発目標)という国際社会共通の指針が掲げられましたが、保健分野に『アルコールの有害な摂取を防止する』という項目が含まれたのです。その結果、国際社会はタバコと同様に、徐々にアルコール商品の排除に動き始め、世界のビールメーカーも足並みをそろえています」

例えば、世界一のビールメーカー『アンハイザー・ブッシュ・インベブ』(ベルギー)をはじめ、『ハイネケン』(オランダ)や『カールスバーグ』(デンマーク)も、2025年までにアルコール度3.5%以下の低アルコール飲料、もしくはノンアル飲料の商品構成比率を20%まで引き上げると宣言している。

これを受けて日本のアサヒも昨年12月、低アルコール飲料とノンアル飲料の商品構成比率について、19年の6%から25年までに20%へ高めるという「スマートドリンキング」宣言をして注目を集めた。

増加の一途をたどっている“ソバーキュリアス”

ノンアルビールが伸びるコロナ以外の要素としては、若者のアルコール離れも挙げられる。最近、世界各国の若者の間では、「酒を飲まない」文化がムーブメントになりつつある。いわゆる「ソバーキュリアス」の増加で、直訳すると「シラフでいることに好奇心旺盛な」という意味になる。

「酒が飲めないわけではないが、あえて飲まない人や、少量しか飲まない人をソバーキュリアスと呼びます。欧米では数年前から、ミレニアル世代(25歳~40歳)を中心に大きなトレンドになっています」(同)

アメリカ大手メディアのCNNによれば、05年に「アルコールを飲まない」と答えたイギリスの若者(16~24歳)は18%だったが、15年には30%にまで拡大したという。日本でも厚生労働省の『国民健康栄養調査』によると、20代男性のアルコールの飲酒習慣は1999年に34%だったが、19年は12.7%にまで落ちている。

若者を中心にノンアルバーが繁盛するなど、日本でもソバーキュリアスは増加の一途をたどっている。かつてはコミュニケーション・ツールとして、アルコールが大きな役割を果たしていたが、現代は多種多様なSNSで簡単にコミュニケーションが図れる。こうした若者にとって、むしろアルコールは金や時間の無駄という認識なのだ。

「お酒を飲まない若者が増えたということは、逆にノンアルビール需要が拡大する可能性を含んでいる。今後はノンアル商品の開発競争が、ビールメーカー間で激化するでしょう」(同)

コロナ禍で需要が加速したノンアルビールが、やがてアルコール入りビールを量的に逆転する日が来ても、決して不思議ではない。

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