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『月下のサクラ』著者:柚月裕子~話題の1冊☆著者インタビュー

『月下のサクラ』著者:柚月裕子~話題の1冊☆著者インタビュー
『月下のサクラ』徳間書店/1870円

『月下のサクラ』徳間書店/1870円

柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)
1968年、岩手県生まれ。山形県在住。2008年、『臨床真理』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。他にも著書多数。

――本作は『朽ちないサクラ』に続く〝サクラ〟シリーズの第2弾です。前作では県警広報担当の事務職員だった森口泉が警察官に転身する決意をします。当初からシリーズ化する予定だったのですか?

柚月 シリーズ化の予定はありませんでした。このシリーズは前日譚となる『朽ちないサクラ』で完結の予定でしたが、編集部から連載の依頼があり、警察官になる決意をして作品が終わった泉に事件を追わせたら面白いなと思い、続編が生まれました。どの作品もそうですが、初めての週刊連載ということでかなり悩みながらの執筆でした。

――映画化された『孤狼の血』では男臭い刑事が主人公でした。今回、女性を描くのに、なにか留意点などはありましたか?

柚月 社会や組織での女性の活躍はめざましいものがありますが、その一方で、まだ息苦しく感じる場面は多くあります。その難しい現実は取り入れましたが、泉というキャラクターに関しては、あまり性別は意識しませんでしたね。男性でも女性でも、同じ状況になったらそうするだろうと思う行動をとらせました。

世間の耳目を集めた実際の事件がモチーフ

――警察の金庫で保管していた約1億円が紛失し、犯人を捜すうちに殺人事件に発展していくという展開。どこかで聞いたことがあるような気がしますが…。

柚月 今回のストーリーは、2017年に広島県警中央署からおよそ8500万円が紛失した実際の事件をモチーフにしています。世間の耳目を集めた事件で、私もとても関心を持っていました。次々と出てくる情報を追っているうちに「ああではないか、こうではないか」などと想像力をかき立てられ、この事件を書いてみたいと思うようになりました。

そのときに、やはりかねてから興味を持っていた捜査支援分析センターを取り入れようと考えたのですが、泉を取り巻くメンバーには、泉に負荷をかける形で、あえて個性的な人物たちを配置しました。悩み傷つきながらも、諦めずに事件に挑んでいく泉の姿を楽しんでいただければうれしいです。

――今後の執筆のご予定はありますか?

柚月 週刊文春で連載していた『ミカエルの鼓動』が、今秋に刊行されます。来年からはまったく新しい長編連載が始まる予定で、今その取材を進めています。それと並行して、デビュー当時から大切に育てている「佐方貞人」シリーズの長編連載も手掛けようと思っています。1人でも多くの方に「面白かった」と思っていただける作品を書き続けていきたいと思います。どうぞ応援してください。

(聞き手/程原ケン)