ワクチン接種に急ブレーキがかかっている。職域接種の新規申請が停止されただけでなく、自治体が準備した大規模接種会場が休廃止に追い込まれ、すでに予約した個別接種をキャンセルする病院まで現れた。ワクチン供給が追い付かなくなっているからだ。
河野太郎行革担当大臣によると、7月以降のワクチン供給が減る中、供給可能量の3倍程度の要請が自治体から寄せられており、自治体への配分を絞らざるを得ない状況だという。
しかし、こうした事態が起きることは、どう考えてもおかしいと思う。もともと厚生労働省の計画は、まず医療従事者500万人に先行接種し、その後、高齢者3600万人に接種するというものだった。合計で4100万人、接種回数は8200万回ということになる。
もちろん、すべての高齢者がワクチン接種をするわけではないが、仮にすべての人がワクチン接種をしたとしても、8200万回分のワクチンがあれば足りるということになる。
医療従事者と高齢者への接種は、すべてファイザー社製のワクチンだが、政府の発表によると、6月末までに調達されるファイザー社製ワクチンは1億回分とされていた。つまり、医療従事者と高齢者全員がワクチンを接種したとしても、6月末で1800万回分のワクチンが余っていないとおかしいのだ。
一方、職域接種に回されたモデルナ社製のワクチンは、6月末までに4000万回分が供給される計画になっていた。ファイザー社製のワクチンと合わせれば、1億4000万回分だ。ところが、7月2日時点の接種回数は4747万回しかない。実に66%、9253万回分のワクチンが「行方不明」になっている計算になるのだ。
ワクチン調達の失敗を隠している!?
モデルナ社製ワクチンを使用した職域接種は、報告が遅れているという話もある。そのこと自体も大きな問題だ。新型コロナ対策の基本となる情報を政府が把握していないことになるからだ。ただ、職域接種の報告が1回もないと仮定しても、ファイザー社製ワクチン5253万回分が行方不明ということになる。こんな馬鹿げたことがあってよいのだろうか。
政府の説明は、「流通過程で多くのワクチンを貯め込んでいる自治体がある」というものだが、ファイザー社製のワクチンは、マイナス20度の冷凍で2週間しか保存できないから、大量にワクチンを貯め込んでいる自治体があるとは、とても思えない。やはり、政府がワクチン調達に失敗して、予定の半分程度しか日本に入ってきていない可能性が高いのではないだろうか。
もしそうだとしたら大問題だ。政府はこれまで「ワクチンがゲームチェンジャーになる」と繰り返し主張し、ワクチン接種の進展を前提にオリンピックの開催を準備してきたからだ。ワクチン供給が予定の半分しかないことが分かっていたら、オリンピックは中止する以外に方法がなかったのではないか。
私の主張は荒唐無稽に思えるかもしれない。しかし、政府はワクチンの供給量を公表していない。しかも、契約先との秘密を守る必要があるとして、ワクチン調達の契約書そのものも公開していないのだ。
先進国の中で、なぜ日本だけがワクチンの調達に失敗したのか。なぜ政府は国民にそのことを隠してきたのか。野党とメディアは徹底追及すべきだろう。
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