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赤井英和インタビュー~15年ぶり“映画主演”『ねばぎば新世界』公開記念

赤井英和インタビュー~15年ぶり“映画主演”『ねばぎば新世界』公開記念
赤井英和 (C)週刊実話Web

――映画主演は15年ぶりとのことですが、まず率直なご感想をお聞かせいただけますか。

赤井「振り返ったら、主演のほうは15年前に阪神淡路大震災を扱った映画『ありがとう』以来ですから、今回の意気込みとしてはエエモン作りたいという思いで取り組みました」

――最初に台本をご覧になった時の感想は?

赤井「いやぁ、最初に台本をもらった時に読んでみると、私に当て書きをしてくれているように感じまして。私、今まででもドラマにしても映画にしても、まあNGが多いんですけど、今回だけはそれがゼロでした。それというのも、覚えた台詞が口先からでなしに、ここ(体の底)から気持ちのこもった台詞として出てきたんです」

――それでは撮影は快調に進んでいったわけですね。撮影期間はどれぐらいかかったでしょうか?

赤井「そうですね。現場では3時間巻き(早く終了)、5時間巻きっていうのがありましたね。『こんだけ早く終わるんやったら、ちゃう(違う)とこ、なにか撮りましょか?』って、急きょ別の日に撮るはずだったシーンの撮影をいきなり入れたりしました(笑)。ですから、だいたい2週間ぐらいで終わったかと思います」

――では完成した映画を見たご感想は?

赤井「出来上がったこの映画を見てグッと惹かれるシーンは、殴り込み行く前に(相棒の)コオロギと一緒に焼き肉を食べている時に、コオロギが昔もこうやってよう焼き肉食べてましたなっていう話をしてるところで、『お前のことをホントに弟やと思っとんね』という気持ちを伝えるところがあるんですが、改めて2人の距離というのはそんなに近いんやなって思ってグッときましたね」

――今回の映画では、赤井さんの地元である新世界の人々の協力も大きかったと聞いています。

赤井「そうなんです。『おっ赤井、帰ってきたんか、どこ行くねん?』『いや、ちょっとそこまで』『気いつけや!』みたいな、新世界ってとこは知らん人でも距離が近い街ですけど、そういう地元の皆さんにもご協力いただいて、エエ映画ができたなって思っています。例えばお好み焼き屋のシーンでは、ホンマのお店のオバチャンが出てくれたり、ドヤ街のシーンでもドヤの社長のオバチャンが出てくれたり、そして(串かつだるまの)上山勝也会長もそうですし、色んな実際の新世界の街の人が大切なキャストとして出てくれはって、しかもみんなエエ味を出してくれてるんですわ」

自分の背中には常に通天閣がある!

――ちなみに、本作の重要な役どころを演じる新世界の名物の上山会長は、浪速高校ボクシング部の赤井さんの後輩に当たるそうですね。そんな赤井さんと関わりのある新世界の地元の方を、上西雄大監督は上手く作品の中で活かすことに成功していると思いましたが、俳優もやり監督もする上西さんは赤井さんから見てどんな方なんでしょうか?

赤井「こっちがどんな球を投げてもちゃんとキャッチしてくれるし、バットを持ったら素晴らしいヒットも打ってくれる。そのへんは臨機応変なお方ですね」

――そんな上西さんから直接、出演依頼を受けたということですが。最初に出演のお話をいただいた時は、どういったいきさつがあったんでしょうか?

赤井「役者でもある監督の上西さんとは以前に違う現場でご一緒したことがあって、その時に昭和の空気の流れている作品で、あの勝新太郎、田宮二郎の名コンビ『悪名』を彷彿とさせるような作品にしようと思っていますと、お誘いを受けたのが最初でした。それはそうですか、是非お願いします、ということで頂いたのがこの作品でした」

――今回、こうして地元での映画撮影をする中で、改めて自分の原点でもある新世界を意識することになったのではないですか?

赤井「やっぱり赤井英和という俳優は地元、新世界に根付いた俳優であるということと、通天閣をバックにして一番似合う俳優やないかと思いました。常に自分の背中には通天閣があるんやなって意識しています」

――新世界という街は、大阪の中でもいまだに昭和の佇まいを感じさせる街ですが、映画の中でもそんな新世界の昭和の雰囲気が活かされていましたね。

赤井「そうなんです。映画に登場するアーケード街や通天閣とかもそうですが、(赤井さん演じる)勝吉の家のロケ地も実は、飛田新地に古くからある私の実家を使っているんです」

――そんな日本的なノスタルジックな世界観を持つ映画ですが、すでに国際映画祭で評価を受けていますね。

赤井「ありがとうございます。言葉は違えど、肌の色は違えど、人の心というものや正義であるとか悪であるとかいう思いも含めて、共通するものやなって思いましたね。〝ねばぎばマインド〟は世界のマインドにも通じるんやなって」

いつも心に“ねばぎば”の気持ち

――このネバーギブアップという言葉ですが、赤井さんもボクシングの現役時代などで使われていたんですか?

赤井「作品の中では『ねばぎばや!』ってよう言うてますけど、実は赤井個人では昔からあんまり使うことはなかったんです。まあ、諦めたらアカンという気持ちとか精神的なものは持っていますけど、わざわざ言葉に出すことはなかったですね。でも映画が発信するこのメッセージは、今のコロナ禍で元気をなくしているみんなに向けた応援メッセージになればいいのかと思っています」

――そもそも、コロナで本来の公開スケジュールが変わったとお聞きしました。

赤井「一昨年撮った映画ですから、本来でしたら去年公開予定だったんですけど、コロナコロナと今年の7月まで延びたということでした。でも、今やからこそ、ネバーギブアップ! 諦めたらアカンという気持ちをメッセージとして、ご覧の皆さんに届けることができればと思っています。私も作品のタイトル通り〝ねばぎば〟の気持ちを大切にして今後も頑張っていきたいですわ」

――では最後に、週刊実話の読者に向けて、ひと言お願いします。

赤井「あの『悪名』のような世界を、令和のお客さんに見てもらいたいと思って演じさせてもらいました。週刊実話の読者の皆さんにとっては、懐かしい昭和の空気を感じ取れる映画になっていると思いますので、是非ご覧頂きたいです。懐かしく感じて頂けますし、また新しい新世界も見て頂けるんじゃないかと思っています。『ねばぎば 新世界』、どうぞよろしくお願いします」

(文:立花加久/企画:丸山剛史)

赤井英和(あかい・ひでかず)
1959年、大阪市西成区出身。プロボクサーとして「浪速のロッキー」と呼ばれる活躍を見せたあと、88年に俳優に転身。映画『どついたるねん』のほか、ドラマ『人間・失格』(TBS系)やNHK連続テレビ小説で主役を務めるなど第一線で活躍を続けている。

映画『ねばぎば新世界』は7月10日より、順次全国で公開! 映画公式サイトは下記。
https://nebagiba-shinsekai.com

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