本誌連載『偉人の逝き方』を執筆中の歴史作家・加来耕三氏の最新刊『戦国武将学』(松柏社/1980円)が面白い。
戦国時代とはどんな時代だったかに始まり、武士とは、武将とは、彼らの戦略・戦術、そして武将・軍師たちの実像など、歴史の学び直しには最適の1冊だ。
歴史には、「知っているようで正しく理解されていない」(本書より)ことが少なくない。例えば、武田信玄といえば戦国最強といわれた騎馬軍団を率いた英雄として、ドラマ・小説などに頻繁に登場する。
だが、そこで描かれた人物像や逸話が果たして真実だったかは、つぶさには解明されていないのである。加来氏は、そういった点を丹念に紐解く。真実を解くことこそが「未来を読む」ことにつながるからだ。
歴史上の人物への評価は変遷を重ねる
他にも関ヶ原の戦いや大坂の陣など誰もが知っている合戦の知られざる裏側、北条早雲や斎藤道三といった下克上(下の者が上の者に打ち勝って権力を手中にすること)の真の姿、ダメな人物の代表のようにいわれる今川義元や徳川秀忠は本当に暗愚だったのかといったコーナーは、まさに目からウロコである。
歴史上の人物への評価は変遷を重ねるもので、これまでヒーローと呼ばれた武将に意外と欠点が多かったり、逆に評価の低い人が再評価されたりするもの。特に令和に入り、偉人たちの位置づけも変わりつつある。
そうした変化から何を読み取るか、興味深い説明とともに一考してみることをオススメしたい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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