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中国人投資家“今が底”日本の宿泊施設買収しまくり~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

新型コロナウイルス感染拡大の影響とそれに伴う経済活動の自粛措置により、国内の観光産業はどこも青息吐息だ。

2020年の箱根の観光客数は、前年比33%減の1257万人で過去最低を記録した。しかし、経営難に陥った観光地のホテルや旅館に、中国を中心とする海外資本が食指を伸ばし、次々と買収を進めているという。

まずはコロナ禍で、日本の宿泊業者がどれほど厳しいかを統計的に見てみよう。経営コンサルタントが解説する。

「帝国データバンクによれば、2020年度の宿泊業者の倒産件数は前年度比66.7%増の125件となり、増加率が過去最高となった。また、125件のうち、新型コロナウイルスの影響による倒産は72件にのぼり、全体の57.6%を占めている。今後は足掛け2年にわたるコロナ自粛が響き、期待のオリンピックも外国人観光客を見込めずで、体力がもたない宿泊業者がさらに増えそうです」

ところが、そんな宿泊業界の一部に異変が起きている。伊豆や箱根、富士山周辺の観光地で、宿泊施設の売買を仲介する不動産業者が明かす。

「昨年から今年にかけて、中国人投資家による物件の問い合わせが急増しており、その割合は一昨年の2倍~3倍です。皆さんご承知のように、現在は日本中どこの観光地もコロナ禍で客足が遠のき、壊滅的な打撃を受けている。そんな先行き不透明な中、中国企業はあえてリスクを冒して投資に乗り出している。また、彼らは有名な観光地の高級ホテルや高級旅館に狙いを定め、それらを意識的に買収しています」

日本の観光産業がこれほど厳しい状況にあるにもかかわらず、なぜ、中国人投資家は大規模な買収を進めているのか。その理由について、中国系投資会社の関係者が詳述する。

京都にチャイナタウンが誕生!?

「日本の観光地は温泉、景観、歴史など、どれを取っても世界に誇れるものばかり。それを中国人はよく分かっているのです」

確かにコロナ前は、北海道や京都をはじめ、全国各地の温泉場などに中国人観光客が殺到していた。

「アフターコロナを見据えて、中国人は日本の観光産業が復活すると確信しています。しかも、日本の宿泊業者は経営が苦しいうえに、高齢化が進んで後継者不足にあえいでいる。これらの高級旅館はコロナ前と比べて、売買価格が3割前後安くなっています。いわば現在が『底』にある宿泊施設の買収は、中国人投資家にすれば100年に一度のビッグチャンスなのです」(同)

では、中国人投資家が、有名観光地の高級ホテルや高級旅館を買い占めている理由はなぜか。

「コロナ以前は中国からの団体客を狙った大型ホテルが人気でしたが、コロナ収束後の有名観光地におけるターゲットは、世界のシニア富裕層になると想定しています。彼らを呼び込むには、やはり伝統的な日本文化を味わえる高級旅館が必要不可欠。たとえ1泊5万円を超えても、世界中から観光客が訪れると見込んでいます」(同)

こうした中国人投資家の動きを裏付ける話が、京都で起きていた。観光コンサルタントが解説する。

「18年に約半年の期間で、中国の投資会社『蛮子投資集団』が120軒もの不動産を買収しました。独特の細長い造りの建物が並ぶ一画を丸ごと買い、宿泊施設を含めた再開発に乗り出すという計画で、実現すれば京都にチャイナタウンが誕生することになります」

食い荒らされる日本の観光業

コロナ収束後に回復が見込まれるインバウンド(訪日外国人旅行客)や富裕層の需要の取り込みを図っているのは、なにも中国企業だけではない。コロナ禍にもかかわらず、京都では高級ホテルの進出ラッシュが起きている。

海外勢だけで見ても、今年3月にはフランスの美食ブランドによる『フォションホテル京都』が開業し、今年9月には米国ヒルトングループの『ROKU KYOTO LXRホテルズ&リゾーツ』が開業を控えている。

さらに、23年にはタイのホテル&不動産大手が手掛ける『デュシタニ京都』がオープン、24年にはイギリスのインターコンチネンタル・ホテル・グループが、日本初進出となる『京都東山シックスセンシズ』をオープンする。

「中国以外の海外勢もコロナ後、日本の観光産業が再び大爆発すると読んでいる。だが、欧米はいずれも新築開業、しかもホテルが主力だ。中国系は既存ホテルや高級旅館の買収が盛んで、その戦略は一線を画している。どちらが勝つか、勝負はこれからです」(同)

いずれにしても日本の観光資源が、世界で高く評価されているのは間違いない。そして、日本独自の観光ビジネスに着目し、海外投資家が一斉に動き始めている。

「日本の観光産業を繁栄させるには、政官民が一体となった、より一層の努力が求められます」(前出・経営コンサルタント)

中には「ハゲタカ」と揶揄される海外投資家もいる。油断していると日本の観光業は食い荒らされ、そして壊滅してしまうだろう。

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