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北朝鮮が本当にヤバい…“女帝”金与正の上司が2人も消された!

(画像)Robsonphoto / shutterstock

北朝鮮の権力中枢では最高幹部の粛清が相次いでいるが、また1人、崔輝朝鮮労働党中央委員会部長の姿が消えた。

「今年1月に開催された党大会で、党中央委員会副委員長を解任されてから5カ月になりますが、公式の場に一度も姿を現していません。高齢のため引退したという説もありますが、粛清説が有力です」(在日韓国人ジャーナリスト)

また、党大会まで党政治局の序列1位だった朴泰成党宣伝担当書記も、処刑された可能性が高いという。

「崔氏は以前、党宣伝扇動部部長の地位にあり、同副部長である金与正氏の直属の上司でした。一方、朴氏も最高人民会議議長、党中央委員会副委員長など要職を歴任し、党宣伝扇動部部長を務めた際は、やはり与正氏の上司でした」(同)

北朝鮮では世代交代が進んでいる。崔、朴両氏は60代後半と北朝鮮指導部の中では若いが、同部が統括する北朝鮮のメディア戦略は、金正恩総書記の時代になって大きく変化した。

「父親の金正日総書記の時代には、最高指導者の露出は少なく神秘的なイメージを意図的に演出していました。しかし、正恩氏は比較的オープンで、外交の場にも夫人を伴い、たびたび登場している。与正氏に至っては常にオーダーメードの膝上スカートを身にまとい、自らの威勢を誇示しています。むしろ北朝鮮当局者らは『与正氏がやたらと目立ちたがって困る』と、こぼしているそうです」(北朝鮮ウオッチャー)

金一族に反発した幹部は消されるというのが北朝鮮の現実だが、それだけ与正氏周辺には「取り巻き派」と「反対派」の葛藤があるとみられる。

与正氏「第1書記」就任近し!?

5月15日ごろ、北朝鮮の首都・平壌の中心部にある寺洞区域で、反体制ビラが大量にまかれ、社会安全省(警察)と国家保衛省(秘密警察)が3日間かけて、数万あるいは数十万枚あったと推定されるビラを回収する騒ぎがあった。

その際、付近の住民に対して「ビラを発見したら即時、通報せよ」としたうえ、「ビラを発見しながら、これを読んだり保管したりする者は、反逆罪に問う」と脅迫していたという。

「韓国からのビラなら防水加工してありますが、これは北朝鮮国内に出回る低質紙が使われており、印刷もやや不鮮明だったといわれます。そのため、国内で印刷、散布された可能性が高い。ビラは、経済混乱による生活悪化の元凶が、金一族の独裁政治と腐敗にあると指摘しており、特に『金与正は悪腫である(同音異義語『悪種』の可能性もある)』とする内容が目を引きました。与正氏がターゲットになったのは、彼女の政治的な存在感が増大していることの表れです」(同)

6月23日、北朝鮮の李善権外相が米バイデン政権からの「無条件での対話」の呼び掛けに対し、「われわれは貴重な時間を失う無意味な米国とのいかなる接触の可能性についても考えていない」と述べ、要請を拒否することを明確にした。

実は、その前日に与正氏が「誤った期待は自らをより大きな失望に陥れるだろう」との談話を発表している。李外相の発言は与正氏の言葉をなぞったもので、与正氏が外相より上の存在であることを示している。

与正氏の対米、対韓政策で前面に出続ける姿は、新設された「第1書記」への就任が近いとも思わせるが、それが当然の帰結になるとは限らない。

「米国に例えると、第1書記は副大統領に相当する地位です。北朝鮮の常務委員など最高指導部は、正恩氏がそれほど遠くない時期に死亡、あるいは身体不全に陥る可能性があると考えている。北朝鮮のエリート層が権力を維持するためには、金一族を残しておく必要があり、制度的な準備の始まりが第1書記の新設だと思われます」(国際ジャーナリスト)

信頼できる同志を持たない正恩氏

ただ、総書記の身に何かあった場合、第1書記に就任した人物がそのまま総書記に昇格するかどうかは別問題だ。成人まで10年弱ある正恩氏の後継男子が、その地位に就くまでの暫定政権的な意味合いがあるのかもしれない。

「もし与正氏が後継者に確定していれば、兄の正恩氏にテープカット用のハサミを手渡したり、兄に渡された花束を脇で受け取ったり、そういった行為はしないでしょう。これらは、帝王学を身に付ける仕事とは言えないからです。つまり、与正氏が後継者としての特別扱いを受けている場面は、今のところ見られていないのです」(同)

2020年6月の南北連絡事務所爆破事件から、世界の視線は与正氏に集中している。しかし、実のところ男尊女卑の文化が強烈に残る北朝鮮指導部の中で、与正氏は自由に動きにくくなっているといわれる。

「19年2月、ハノイでの米朝首脳会談決裂を受け、一度は党政治局員候補から退いた与正氏でしたが、20年4月には同じ政治局員候補に復帰。しかし、21年1月には再び党中央委員に降格されている。このような浮き沈みは、かつての実質ナンバー2だった張成沢(正恩氏によって処刑)や、正日氏の時代から昇進と降格を繰り返してきた崔龍海国務委員会第1副委員長にも見られる現象です」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

現在の与正氏は、正恩氏の後継者でもなく、それほどの地位にも就いていない。しかし、信頼できる同志を持たない正恩氏にとって、何者にも代えられない人物であることは間違いない。

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