【深淵ホラー劇場:映画界が封印した『G級の神々』】#13  2本の問題作を残して映画製作から退いた男――ゲリラ・メトロポリターナと「内なる悪魔」



2本の長編を残して身を引き、悪魔に憑かれた映画監督 ゲリラ・メトロポリターナ



◆ ゲリラ・メトロポリターナのミューズ、ジューシーXと地獄で焼き払われる恐怖

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ゲリラ・メトロポリターナの映画において、絶対に欠かすことのできない女優がいる。彼女はジューシー・X、古風なヴィクトリア朝の英国的な雰囲気をまとい、どこか魂の欠落したような強い印象を放つ人物だ。

「初めてジューシー・X(Juicy X)を知ったのは2021年、イギリスの俳優向けウェブサイトでした。そこには彼女の本名でプロフィールが掲載されており、経歴や写真も公開されていました。私は彼女が醸し出す古風なヴィクトリア朝の英国的な雰囲気に、ある種の魂の欠落のようなものを感じ、強く惹きつけられました」

すぐに連絡を取り、2人はロンドン郊外の公園で会った。そこでゲリラ・メトロポリターナは短編映画『CORPORATE TORMENT (It burns like HELL) 企業拷問(地獄のように焼ける)』の企画を初めて彼女に提案したのだった。2023年に『DARIUSS』がリリースされた際、彼は改めてジューシー・Xにあの短編映画の企画を再始動させたいとラブコールを送った。数ヶ月後の2024年夏、彼らは1日で撮影を行い、『CORPORATE TORMENT (It burns like HELL)』は完成した。ジューシー・Xとゲリラ・メトロポリターナ本人が交互に映し出されるこの性的かつ強迫的なイメージが挿入される実験映画は、なぜかオープニングでホラー映画であると明記されている。

「ルネサンス期の絵画を思わせるジューシー・Xの肉感的な曲線美は私の性的本能を強く刺激し、私はその瞬間に彼女とはまた仕事をすると確信しました。私は彼女をどうしても起用したかったし、何者にもその決意を阻ませるつもりはありませんでした」

◆ ループするポップな拷問、禁断の問題作がベールを脱ぐ!

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『DARIUSS』の陰湿な闇とは打って変わり、陽気な暴力に満ちた『THE BENEFACTRESS (An Exposure of Cinematic Freedom) ザ・ベネファクトレス(映画的自由の暴露)』は、ゲリラ・メトロポリターナ最後の長編映画にして最大の問題作だ。

出演者はゲリラ・メトロポリターナ本人が演じる監督を除いてすべて女性である。露悪的な描写が執拗に続き、多くの観客にとっては苦痛な時間を過ごすことになるだろう。しかし、ある時点でこの映画が即物的な映像の裏側でまったく別の宇宙を描いていることに気づく観客もいるはずだ。映画の冒頭で、それは既に提示されている。

ジューシー・Xは物語内では凶暴な監禁者だが、同時に監督から依頼を受けた女優役でもあるのだ。これがこの映画の持つ特殊で多層的な構造である。

前述の通り、初コラボの短編映画の後でゲリラ・メトロポリターナは次回作にジューシー・Xを起用するつもりだったが、主役を演じる予定の女優が降板し、ジューシー・Xが主演することになった。

「彼女は恐れや躊躇を一切見せず、その役を引き受けてくれました。私は主役の設定を変更し、ジューシー・Xに彼女自身――つまり、私の前作にも出演した女優という役柄――を演じてもらうことにしました。このアイデアは完璧に功を奏しました」

冒頭、監督から出演依頼を受けるジューシー・Xの姿が映し出され映画は幕を開ける。拷問や性的暴力をモニター越しに楽しむ富裕層の女「ザ・ベネファクトレス」をピラミッドの頂点として、ジューシー・Xが演じる監禁者、その犠牲者、家政婦とあらゆる階級の女性が社会構造を再現してみせる。唯一の男性であるゲリラ・メトロポリターナは悪意ある共謀者として、また使命を持った記録者としてその異常な光景を撮影するのだ。次第にそれが映画なのか現実なのか境界は曖昧になっていく。

「私の映画は、観客を喜ばせるためのものではなく、私自身の内なる悪魔を解き放つためのものです」

ゲリラ・メトロポリターナはそう打ち明ける。映画という枠組みを一度離れたものの、表現形式を変えながら彼の中の悪魔は今後も我々観客の常識を激しく翻弄し続けるであろう。  (文/イラスト 沙さ綺ゆがみ)

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