『おもかげ』/10月23日(金)より全国公開中~LiLiCo☆肉食シネマ

『おもかげ』 監督・脚本/ロドリゴ・ソロゴイェン 出演/マルタ・ニエト、ジュール・ポリエ、アレックス・ブレンデミュール、アンヌ・コンシニ、フレデリック・ピエロ 配給/ハピネット

今回は、ちょっと違う誕生の仕方、ショートフィルムからスタートした長編の作品です。私は、『ショートショートフィルムフェスティバル』のアンバサダーを務めさせていただいていますので、年々ショートフィルムへの関心が高まっているのが分かります。今までは、長編を作りたいけど、まだそこまでできなくて〝長編映画への登竜門〟とされていたショートフィルム。でも、最近は長編を作っている監督や役者が、あえて本当にやりたいことをショートフィルムで表現しています。短い上映時間だからこそストレートに突き刺さるメッセージだったり、クスッと笑えたり、哲学的だったり、そして、今回みたいなテーマにも繋がります。

この作品の切ない感情に惹かれ、すぐに配給会社に電話をして「元になったショートフィルムが見たい!」と興奮気味に伝えたら、なんと、この長編の冒頭の15分こそがショートフィルムだったのです。今までも、長編になった作品は多くありましたが、大体はゼロから作り直します。でも、この1本はそのまま続きを作ったのです。

主人公の気持ちを自分の中で噛み砕いてほしい…

元は『Madre(母)』。スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に製作し、世界の映画賞を50以上も受賞。今回は、その先の物語を描いています。

エロティックさに満ちていて、でも、その向こう側には息子を亡くした母の愛が溢れている。フランスにいる幼い息子からの電話。「お父さんがどこかへ行ってしまい、知らない男がこっちに来る」というハラハラするシチュエーションに、遠くスペインにいる母は何ができるのか!? 突然、電話は切れ、それが息子との最後の会話に。

10年後、息子が消えたビーチのカフェで働く主人公のエレナ。ある日、息子の〝おもかげ〟がある少年ジャンと出会う。消えた息子であることへの希望と空回りする気持ちが、少しずつ男性に対する愛へと、複雑に変化してしまう。頭の中がジャンのことでいっぱいのエレナ。でも、その根本にあるのは母としての愛でしょう。女性の心を覗き見した感覚になります。